No.5015 (2020年06月06日発行) P.56
中野智紀 (北葛北部医師会在宅医療連携拠点菜のはな室長、東埼玉総合病院)
登録日: 2020-05-18
最終更新日: 2020-05-18
新型コロナウイルス感染症に関連した緊急事態宣言後、1カ月半が経過しようとしている。もちろん、感染症の克服や生存なき生活はありえないというのは正論だが、既に地域では様々な生活問題が報告され始めている。社会は経済こそ心配するが、生活には無関心のようである。そこで今回は住民の生活の変化に注目して地域の現状について報告したい。
現在、住民の生活は社会と寸断された状態で家族に抱え込まれている。もちろん、現在の脆弱化した家族という共同体には十分な力は残されていない。
一方で農繁期にある農家は自粛とは無縁かもしれない。農家でなくても住民の多くは仕事や買い物、運動、あるいは娯楽などを口実に上手に外出している。時折これらがメディアで問題として挙げられるが、どんなに聖人君子でも、緊張状態を長期間維持するのは容易なことではない。ある程度、保証が強化されるか柔軟でなければ続かない。それでも地域全体としては概ね自粛要請を守っていると言えるだろう。
しかしこの間、本当に家から一歩も外へ出ていない人もいる。様々な理由により自宅に閉じこもることで、通院や服薬の中断や慢性疾患の重症化、フレイル・サルコペニアなどの恐れが高まっている。生きる意欲自体が失われているように見える者さえいる。テレビからの情報だけに依存し、会話も減り不安に押しつぶされそうにしている。
介護サービスをむやみに中断したり、施設や家族により「自粛」させられている要介護者は特に心配だ。これまで本人の思いに寄り添って在宅でのケアを続けてきた家族らも、負担に耐えきれずデイサービスからショートステイへと切り替え始めている。その先には既に施設入居も用意されており、良くも悪くも最近まで議論されていた自立支援などはどこかへ行ってしまったようだ。次項に続く。
中野智紀(北葛北部医師会在宅医療連携拠点菜のはな室長、東埼玉総合病院)[コミュニティドクターの地域ケア日誌④]