No.5018 (2020年06月27日発行) P.63
岩中 督 (外科系学会社会保険委員会連合会長、埼玉県病院事業管理者)
登録日: 2020-05-29
最終更新日: 2020-05-29
前回(https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14716)は、外保連手術試案における人件費の考え方について述べた。今回は、手術診療報酬に大きな影響を与える「手術で使用する医療材料」について解説する。
外保連試案初版が上梓された1982年頃は、高額な医療材料は一部の手術を除くとほとんどなく、絹糸やガーゼなどが中心で、手術料に占める割合は比較的小さかったが、最近は高額な特殊縫合糸などを多数使用することから、その総額も無視できなくなってきている。これらの高価な材料は、安全で迅速な手術に必須であるものの、現在の診療報酬制度では消耗品として手術料に含まれているものが多い。外保連手術試案では、第8版よりこれらの医療材料の収載を義務付けた。すなわち、試案に収載したい新規手術では必ず50件以上の医療材料調査結果を添えること、既収載の手術にも実態調査を行うこと、年間100件未満の稀有な手術も最低10件の医療材料調査を行うこととした。これらの医療材料を、4つのグループに分類して収載し、診療報酬改定の際に厚生労働省へ提出する提案書に記載することとした。
医療材料の内訳であるが、医療材料Ⅰは、どの手術にでも必要な最低限の医療材料(覆布、ガウン、手袋、電気メスなど)であり、類似手術間で共有できるよう基本セットとして29種類を設定した。例えば、開腹の直腸低位前方切除術は、「腹1」という名称の基本セットで、総額4万5229円である。医療材料Ⅱは、それぞれの手術で使用する固有の医療材料で、実態調査50件の中央値を収載している。請求可能な特定保険医療材料Ⅱaは、項目を計上するのみで試案の手術費用の合計金額には含めていない。医療材料Ⅱbは一部償還される特定保険医療材料で、自動縫合器のように個数制限があり、制限個数以上の請求できない部分を材料価格として収載した。医療材料Ⅱcは償還できない医療材料で、総額1000円以上の医療材料(特殊縫合糸、内視鏡手術のポートなど)をすべて収載した。これらの償還されない医療材料Ⅰ、Ⅱb、Ⅱcの総額が手術診療報酬を超える術式もあり、診療報酬改定のたびに厚生労働省の担当官に手術そのものの増点を要求している。
次稿では、手術報酬についての基本的考え方を述べる。
岩中 督(外科系学会社会保険委員会連合会長、埼玉県病院事業管理者)[外保連]