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【識者の眼】「福岡県北九州市での新型コロナウイルス感染拡大への対応から得た10の教訓」和田耕治

No.5020 (2020年07月11日発行) P.61

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2020-06-15

最終更新日: 2020-06-15

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新型コロナウイルス感染拡大に見舞われた北九州市での対応から得た教訓は、今後の参考になります。地元関係者のインタビュー等から10の教訓をまとめました。

1. 複数の孤発例が見られるなど感染拡大の兆しがあれば、市内の医療機関や高齢者施設などに呼びかけ、疑い患者(特に重症化リスクの高い患者)や救急搬送の患者に検査できる体制を強化する。医療機関では、紛れ込み症例を想定する。医療従事者の発熱を優先的に検査できるようにする。

2. 自施設でPCRやLamp法などの検査ができる医療機関を確認。できる施設が少ない場合には民間の検査機関を早期から活用できるようにし、保健所を通した検査だけに頼らないようにすべき。今後、迅速抗原検査などの活用が期待される。

3. 肺炎や死亡者にも新型コロナウイルスの検査(疑似症サーベイランスに基づく)を行うように基幹病院などに呼びかける。これは平時からも最初の患者の探知のためにも行う。

4. 平時から、地元の専門家を交えた専門家会議のような相談できる組織を作っておく。

5. 小学校で感染が数人に広がった事実は地域に大きな影響を与え、学校全体を休校にせざるを得なかった。子供達に感染者が出た場合、休校の対象(学年か全体かなど)の選定は難しいが、教育機会の確保についても議論し、柔軟な対応をする。

6. 感染拡大のあった医療機関に電話での叱責の他、入院患者や職員、その子供などにも差別や偏見が発生した。医療が逼迫している状況で、こうした対応に人員を割く余裕はない。市長など政治のリーダーや市民の力によって差別や偏見を予防し、感染者がスムーズに職場復帰できるようにしなければならない。

7. 災害初期にみられる「英雄期」や「ハネムーン期」という状況にはならず、社会や組織を分断するようなことが起きていた。流行を抑えた後には、お互いに連携し、助け合える地域社会になるようなリーダーシップが求められる。そのためにも関係者間での訓練や連携が必要。

8. 今回は県が特定の市に対して不要不急の移動の自粛を求めた。この解除に向けては、当該の市が積極的にデータや見解を出す必要がある。

9. 高齢者施設で感染を疑った場合に、すぐに検査ができるような医師との連携を含んだチャネルを確保する。

10. 感染拡大について悲観せず、次はもっと上手く対処できるようになると前向きに捉える。中長期での対応が求められるなかで、経験値が増すことは決して悪いことではない。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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