少年鑑別所は法務省矯正局の所管する矯正施設であり、各都道府県に1箇所ずつ(ただし、東京都・福岡県は2箇所、北海道は4箇所)ある。家庭裁判所の決定により、法を犯す行為等をなした20歳未満の少年を一定期間収容する行政機関である。その目的は非行少年の鑑別、すなわち、その少年が非行に至った原因を探り解明することである。
常に、非行の原因は単一ではない。昨今話題になる発達障害だけで犯罪に至ることはありえないし、貧困だけが非行の原因ではない。本人の資質や能力・性格などの内因と、家庭環境や地域性、社会状況などの外因とが絡み合って問題を孕んだ土壌が形成される。そこにちょっとしたきっかけやタイミングというものがあって、犯罪が起こるのである。
また、非行とは思春期に起こるものである。未成年者の犯罪・非行に関わる手続き全般を規定している少年法は、そこを強調している。つまり、子どもから大人に移り変わる時期であり、成長・発達段階の途上にある思春期に起こした事件すべてを本人の責任に帰することはできず、生育上の経過に何らかの障害が起こっているとする考え方である。懲罰ではなく保護し教育するのだという保護主義、その後の健全育成の障害にならないようにプライバシーを保護するという秘密主義は、その考え方を根拠にしている。したがって、非行少年の鑑別とは、単一ではなく複合的な視点をもって、思春期における心身の様々な状況を把握し読み取っていく作業となる。
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