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【識者の眼】「アジアの患者団体が連携してアドボカシーの発揮を」ガテリエ・ローリン

No.5022 (2020年07月25日発行) P.61

ガテリエ・ローリン (国立がん研究センター、NPO法人日本脳腫瘍ネットワーク)

登録日: 2020-07-14

最終更新日: 2020-07-14

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欧米では、患者団体が癌医療において、強力なアドボカシー(権利擁護)活動を展開しており、科学的・財政的にもリーダーシップを発揮し、癌研究助成金の提供まで担当し、患者ケアと創薬研究を推進している。有名な例としては、元米国がん研究協会(AACR)会長を最高科学責任者に迎えた膵臓癌患者団体PANCANがあり、2020年には、10件の新規研究助成金を提供している。また、欧州の例を挙げると、欧州を拠点とする患者団体(白血病、脳腫瘍など)はアジアやアフリカなど他の地域の患者団体にも連携を呼びかけ、アドボカシーの強化を図っている。世界の癌罹患・死亡数のそれぞれ48%と57%はアジアで発生すると言われる今日、アジアの患者団体が連携し、リーダーシップを発揮して、地域の癌患者のアンメットメディカルニーズを強調すべきである。また、アジアにおいて死亡の割合が罹患の割合を大きく上回っているのは、医療体制そのものの整備が不十分であるだけでなく、癌の早期発見や治療における世界での標準的な技術がアジア地域で未だ導入されていないことを意味する。

こうした状況を背景に、心強い取り組みとして、日本、中国、インド、シンガポール、香港、ニュージーランド、オーストラリアの脳腫瘍患者団体が2019年10月に「アジア太平洋脳腫瘍ネットワーク(APBTA)」をアジア主導で設立した。このイニシアチブの最初の成果として、国際脳腫瘍ネットワーク(IBTA)が素案を作成した国際的な脳腫瘍患者権利憲章の作成に関わり、アジアにも適用可能な文書としたことが挙げられる。APBTAにおいてのアジアの患者団体連携に不可欠な3つの柱として提案されているのは、①患者代表者間の継続的な協力、②地域のための患者専門家研修プログラムの作成、③地域の患者からのアンメットメディカルニーズに関する定量的なデータを収集するための実態調査─である。当事者である患者が国境を越えてアジアの状況を把握し、一丸となって政府や医療者に働きかけなければ、アジアの癌医療における患者不在の状況は変わらないだろう。

ガテリエ・ローリン(国立がん研究センター、NPO法人日本脳腫瘍ネットワーク)[アジアの癌医療研究連携

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