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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症の各検査と診断の特徴」栁原克紀

No.5024 (2020年08月08日発行) P.57

栁原克紀 (長崎大学病院検査部教授・部長)

登録日: 2020-07-27

最終更新日: 2020-07-27

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2019年12月に中国・武漢市で報告された原因不明の肺炎は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が原因であることが判明し、現在はヒト-ヒト感染によって流行が世界的に広がっている。大部分の症例は、無症状あるいは軽症である。しかし、重症化する症例では敗血症をきたし、致死率も高いことがわかってきた。そのため、早期に検査・診断することは重要である。このウイルスを検出する検査は大きく2つに分けることができる。

1つは、ウイルスそのものを検出する方法で、遺伝子検査や抗原検査であり、鼻咽頭ぬぐい液や喀痰などの感染性がある検体を用いる。もう1つは、ウイルスに対する生体側の反応をみる抗体検査であり、検体は血液である。

遺伝子検査はウイルスが持っている特徴的な部分をPCR(polymerase chain reaction)法等で増加させる方法で、ごく微量でも検出でき、高い感度が最大の長所である。現在の公定法であれば、10copies/μL程度は検出可能である。一方、特殊な機器が必要であること、手技が煩雑であり2〜3時間以上かかること、高い技量を持った臨床検査技師でないとできない、といった短所がある。高い感度のため、検査全体の精度管理も厳重に行う必要がある。迅速検査機器の導入により、遺伝子検査の拡充が進むことが期待される。

抗原検査は、ウイルスの一部(抗原)を検出する方法である。30分程度で結果が出ることに加えて特殊な機器がいらず、ベッドサイドでできることが長所である。一方、ある程度病原体が多くないと検出できないため感度が低いことが短所である。わが国で承認された抗原検出用キットは、症状発現後2日目以降9日以内であれば、追加のPCR検査を行うことなく、確定診断ができる。

抗体検査は、ウイルスが感染したことにより生体側で産生され、血液中に存在する抗体(免疫グロブリン、IgM抗体およびIgG抗体)を検出するものである。IgM抗体およびIgG抗体はいずれも発症早期には陽性とならない可能性が高く、医療機関では発症早期の患者を診断することはできない。一方、発症してから時間が経過したものではIgG抗体の陽性率が非常に高いため、既感染の確認には有用であると考えられる。抗体検査を行うことによって、その地区や施設の疫学を把握することは可能である。鼻咽頭ぬぐい液や喀痰などの感染性がある検体を採取する必要がないことも長所になる。

新型コロナウイルス感染症の診療においては、各検査の特徴を理解して、使い分けることが大切である。

栁原克紀(長崎大学病院検査部教授・部長)[敗血症の最新トピックス⑦]

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