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【識者の眼】「北海道医療大学の卒業生から肺がん、胃がん患者を発生させないプロジェクト」浅香正博

No.5027 (2020年08月29日発行) P.61

浅香正博 (北海道医療大学学長)

登録日: 2020-08-11

最終更新日: 2020-08-11

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がんは遺伝子の異常で発生することがわかっており、遺伝子の異常は高齢になればなるほど起こりやすいことが明らかになっている。わが国は世界トップクラスの長寿国になって久しいが、それに伴い、がんになる可能性が高くなってきた。わが国の胃がんの発生数を見ると60歳未満の人では全体の3%に過ぎず、大半は65歳以上の高齢者に発生している。がんが加齢に基づく現象のみであるならば予防は困難と思われるが、それ以外にも原因はいくつも存在する。がんの原因が明らかになれば、その原因を取り除くことががんの予防につながる。これががんの一次予防である。

私が勤務する北海道医療大学は薬学部、歯学部、看護福祉学部、心理科学部、リハビリテーション科学部、医療技術学部の6つの医療系の学部から構成され学生数は約3500名である。私が学長になった翌年2018年度から、卒業生から予防可能ながんである肺がんと胃がんの発生を限りなくゼロに近づけるプロジェクトを開始した。どちらのがんも学生時代から予防を行うと将来卒業生からのがんの発生は限りなくゼロに近づくと考えられたからである。肺がん予防のためには禁煙の重要性を講義や掲示により学生に徹底させるようにした。“北海道医療大学の学生諸君、すぐに喫煙をやめよう”という小冊子を作成、全学生のみならず教職員にも配付して大学を挙げての禁煙プロジェクトに理解を求めた。胃がん予防のためのピロリ菌の除菌も北海道医療大学のがん予防プロジェクトに組み入れ、“胃がんでいのちを落とさないために”という小冊子を作成し、全学生、教職員に配付した。ピロリ菌抗体検査を行い、陽性者はすべて除菌することにして、ピロリ菌の診断、治療の費用はすべて大学がカバーすることにした。

どちらのがんの予防についても結果がわかるのは40年以上先の話で、私の生きている間にはわかるものではない。しかしながら、私たちが始めたがん予防プロジェクトを若年者から行うと、肺がんと胃がんの発生ゼロが達成可能と考えられる。他の大学でも是非採用してほしいと期待している。

浅香正博(北海道医療大学学長)[がんの予防]

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