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【識者の眼】「日本の新型コロナ感染症対策はなぜ一向に変わらないのか?」渡辺晋一

No.5029 (2020年09月12日発行) P.59

渡辺晋一 (帝京大学名誉教授)

登録日: 2020-08-25

最終更新日: 2020-08-25

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既に本欄で述べているように感染症対策の基本は①感染者の発見、②隔離、③治療─である。しかし日本では感染者の発見に必要なPCR検査を絞り、人口当たりの検査数は今でも発展途上国より少ない。しかも日本の感染対策を担う分科会の専門家は、無症状の人にはPCR検査をしないと言う。そのため日本の感染者数は氷山の一角で、全体像がつかみ切れていない。それにも関わらず、分科会は7月末には感染のピークに達したと述べている。しかし大阪では、今でも発熱して保健所に連絡してもPCR検査に数日かかり、感染が分かった時点では重症化している人が多いという。

新型コロナ感染症の発生から半年以上たち、若い人は感染しても無症状が多く、このような人から家庭内や高齢者に感染が拡大し、クラスターを形成することがわかっている。ところが日本人は重症化せず、死亡する人も少ないと科学的根拠がない見解を主張するマスコミがある。しかし8月以降、重症感染者が増えているし、死亡者も毎日のように報告されている。また感染者が増えても重症化しないようにすれば良いと言うが、具体的に何をすれば重症化しないのであろうか。

今でも症状が出ないと(以前は37.5度以上の発熱が4日以上)PCR検査を受けることできず、依然としてクラスター対策である。しかし既に市中感染が蔓延し、日本全国で、寮や学校、職場、家庭内でクラスターが発生し、クラスター対策では対処できなくなっている。

PCR検査を無症状者も含め幅広く行えば、感染源を早く発見することができ、感染者を隔離することによって感染拡大を防ぐことができる。これが世界の流れであるが、一部のマスコミはやみくもな検査は費用がかかると言って反対する。PCR検査もしないで経済を回せば、さらに感染者が増加して、日本の経済も破綻してしまう。しかもPCR検査はマスク配布より感染対策の対費用効果は高い。また保健所が大変だからというが、PCR検査を保健所に押し付ける法律を変えれば良いだけである。しかし政府は会議の議事録は残さないという。

Go Toトラベルは感染を拡大させ、沖縄では東京由来の感染者が激増したという。宿泊施設は2分化して、個室温泉があるような高級ホテルは潤っているという。Go Toトラベルの原資は税金で、金持ちだけが使って良いものではない。経済か感染症対策かの対立軸をあおるのではなく、PCR検査をすることによって経済を回すようにしないと、日本の将来はない。

渡辺晋一(帝京大学名誉教授)[新型コロナウイルス感染症]

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