No.5028 (2020年09月05日発行) P.61
久保隆彦 (代田産婦人科名誉院長)
登録日: 2020-08-27
最終更新日: 2020-08-27
今年、新型コロナウイルスが全世界で猛威を奮っている。これまで周産期感染症に携わってきたためか、妊婦のコロナ対策の質問を受けることが多い。風疹、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、トキソプラズマなどは、妊娠中、分娩中、または母乳を介して、お母さんから赤ちゃんに感染する。ワクチンも特効薬もない新型コロナだけではなく、周産期の感染症予防は、特別な対応ではなく日常の注意深い生活習慣の徹底が大切であると考え、2013年に母子感染予防の5カ条を作成したので、紹介する。なお、米国疾病予防管理センター(CDC)も同じ様な勧告を発出している。
風疹、麻疹、水痘、おたふくかぜなど多くのウイルスはVPDだが、妊娠中は接種できないので妊娠を希望する女性はワクチン接種してから妊活することを強く勧める。特に風疹は、妊娠中に感染すると胎児に先天性風疹症候群を起こすので、妊婦健診で、風疹抗体を持っていないか抗体の値が低い場合は、ご主人や同居のご家族に麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を接種する。ただし、インフルエンザワクチンは妊娠中でも安全かつ有効である。
手洗いは感染予防に重要である。特に、帰宅後・食事前には石鹸でしっかり洗う。調理時に生肉を扱う時、ガーデニングをする時、動物(猫など)の糞を処理する時などは、使い捨て手袋を着けるか、その後、丁寧に手を洗う。
尿、唾液、体液などには感染源の微生物が含まれるので、ご自分のお子さんのおむつでも使い捨ての手袋を着けて処理するか、その後、丁寧に手を洗う。家族でも歯ブラシ等は共有せず、子供への食べ物の口移しはしない。妊娠中の性生活では精液の暴露を防止するためにコンドームを着用する。
生肉(火を十分に通していない肉)、生ハム、サラミ、生チーズなどは感染源の微生物が含まれるので出来る限り妊娠中は食べないようにする。生野菜はしっかり洗う。しかし、お刺身は心配ない。
新型コロナのように飛沫で感染する病気の流行時は、人混みを避け、ソーシャルディスタンスを保ち、コンタクトではなく眼鏡を着用する。他人にうつさないために3密ではマスクを着用する。子どもは感染症にかかりやすく、特に熱や発疹のある子どもには注意する。
久保隆彦(代田産婦人科名誉院長)[新型コロナウイルス感染症]