No.5029 (2020年09月12日発行) P.62
神野正博 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)
登録日: 2020-09-01
最終更新日: 2020-09-01
三密である。年末の流行語大賞に当選確実かと思われる。今や誰もが知っているこの言葉、いつ、誰が作った言葉か? 改めて紐解いてみたい。
2月25日に厚生労働省にクラスター対策班が設置され、クラスターの共通項を見つけて類型化すれば、より有効な行動変容を呼びかけることができるはずとのことで、それまでのスポーツジム、ライブハウスや屋形船などにおける感染事例から、①換気が悪く、②人が密に集まって過ごすような空間、③不特定多数の人が接触するおそれが高い場所、での注意喚起が行われた。そして3月14日に首相官邸から、この注意喚起をより分かりやすく、①換気の悪い密閉空間、②多数が集まる密集場所、③間近で会話や発声をする密接場面、と発出されたことが三密の始まりのようだ。
この辺までは何となく体感してきた三密の語源であるが、これだけではない。三密は真言密教の教えでもあるそうだ。三密の修行とは、①身密(身体・行動)、②口密(言葉・発言)、③意密(こころ・考え)、を整えることだ。コロナ対策に当てはめれば、身を清潔にし、命を守る行動を心掛ける。感謝の気持ちを口に出し、決して風評など口にしない。そして、自分だけでなく他者に気を配り、様々な情報を得ることでこころ惑わされない、ということになるだろうか。こうなるとこちらの三密の方が基本姿勢としてさすがに奥深い。
私たちは、仕事でも私生活でも本当にこの2つの三密を実行しているか? 秋に向かってインフルエンザの流行も危惧される今こそ、振り返る必要があろう。もちろん、医療や介護、福祉の世界では、その仕事の性格上、密にならねばならないことはたくさんある。しかし、回避できる密までも、医療、介護、福祉だからと言い訳にしていないだろうか。
ここで(密教の)三密の姿勢のもとで、三密を回避するこれからの技術・サービスを以下のように読み替えてみたい。
・密閉⇒超臨場(メタ・リアリティ)
・密集⇒遠隔(リモート)
・密接⇒非接触
いずれも、我々の領域では、オンライン○○といったものは当然のこと、VR(仮想現実)などを含めたICTやロボット技術のお世話にならねばならない。10年先だと思っていた未来をいま先取りするイノベーションが求められているに違いない。
神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)[新型コロナウイルス感染症]