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【識者の眼】「新型コロナウイルスの今後の見通しについての私見」和田耕治

No.5034 (2020年10月17日発行) P.58

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2020-10-06

最終更新日: 2020-10-06

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経済活動の再開が続く中で、新型コロナの感染拡大防止の「戦略」や「目標」がやや曖昧になっていると感じている。死亡者を最少限にすることは引き続きの大目標である。冬を迎えるにあたり、そして中長期を見据えて、この大目標を達成するために、例えば次のようなことの具体化が必要と考えている。

1. 感染者がいても地域内で感染が広がりにくい社会作りの推進

具合の悪い人は外に出ない、また、そうした時には会社や学校を休めるようにする。3密に該当する場面をできるだけ日常においても少なくする。そして、感染が少し広がっても、早期に地域で探知され、抑えられる体制である。さらに、感染拡大をしている際においても、市民や自治体の首長などが冷静に対応できるようにする必要がある。こうした経験や教訓を、特にこれまで感染者が少なかった地方都市ほど共有して、それぞれが学んでおきたい。

2. 高齢者や重症化リスクの高い人の感染予防策の徹底の継続

高齢者や重症化リスクの高い人、その家族の方などは、この半年程度はかなり慎重に行動された方が多く、それが死亡者数を減らすことにつながった。米国においては高齢者施設での感染が未だに大きな課題であり、医療費が高額で治療が十分にされないこともあり死亡者数も多くなっている。日本でも高齢者施設での感染対策は引き続き必要であるが、家族への面会機会などが減っていることは課題である。

日本では、2回の流行の波を経験するなかで、患者の増加にあたっては市民への行動自粛のお願いなどにより、感染の収束を迎えることができると経験的にわかってきた。しかし、既に現在は災害でいうと慢性期に入っており、人々の意識も様々である。次も同じように抑え込めるかは市民とのコミュニケーションや政府、自治体への信頼感に大きく影響するだろう。

この冬がどういう状況になるかはわからない。ただ、一冬を超えることで我々はさらに多くの経験を積み、来年春には、今年より明るい将来見通しが持てるようになると信じている。そして、2021年7月からの東京オリンピックに向けた対策についても、ロードマップを示して対策の具体化が求められている。その半年後の2022年2月に開催される予定の冬季北京オリンピックと連携することも成功の鍵になると筆者は考えている。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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