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【識者の眼】「COVID-19感染拡大下の子どものメンタルヘルス」石﨑優子

No.5039 (2020年11月21日発行) P.57

石﨑優子 (関西医科大学小児科学講座准教授)

登録日: 2020-11-05

最終更新日: 2020-11-05

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大は世界中の人々の生活に大きな変化をもたらし、身体と精神の健康に影響を与えている。その中で子どものメンタルヘルスについて海外で発表された論文では、うつ、不安、PTSDなどネガティブな影響を述べたものが多い。COVID-19感染拡大の何が子どもの心に悪影響を及ぼすのかに関しては、ロックダウンがもたらす社会的孤立(social isolation)と孤独感、行動の制限、家族が家の中に拘束されること(family confinement)等がある。特に神経発達症等の脆弱性を持つ子どもにおいてリスクが高い。さらに子どものメンタルヘルスには母親の精神的健康度が関与していることや、中長期的な影響も予想されている。国内でも同じことが言えるであろう。

社会的孤立が子どものメンタルヘルスに及ぼす影響として、筆者は地域のコミュニティと家庭との関係性が異なる、海外在留邦人家族、国内山間部、国内都市部で、家族間の精神的健康度の関係を調べたことがある。親戚など身近なコミュニティから切り離された海外在留邦人と都市部の新たに開発されたニュータウンに移り住んできた核家族中心の家庭では、母親の精神的健康度が子どもに関連し、家父長的な要素が残り三世代の大家族が多い地域の家庭では、父親の健康度が子どもに関連していた。この海外在留邦人と国内都市部の家族とは社会的孤立の例である。親しい人たちから離れて移り住んだ先で、多くの場合、父親は仕事で長時間外出し、家の中で母親と子どもが向き合う構図となり、母親の精神面が子どもに影響したと考えた。

しかし今回のCOVID-19感染拡大による自粛では、父親も在宅ワークとなり家で過ごしている。その中で起こってきたのが、家庭内暴力、児童虐待のリスクの増加である。これらを考慮して、今後自粛生活が続く場合にすべきことはオンラインで繋がることであろう。友人と繋がること、遠隔精神医療を受けることなど、オンラインによる取組はさまざまな可能性が示され始めている。そして家にこもることはネガティブな影響ばかりではない。家族が家庭内で向き合うことで家族間の距離が近くなり、家族の結束をもたらす機会にもなるであろう。いずれにせよCOVID-19が子どものメンタルヘルスに与える影響を評価するためには中・長期的な経過観察が必要であることは間違いない。

石﨑優子(関西医科大学小児科学講座准教授)[社会的孤立][COVID-19][子どものメンタルヘルス]

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