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【識者の眼】「今だからこそ、お家に帰ろう!」中村悦子

No.5039 (2020年11月21日発行) P.57

中村悦子 (社会福祉法人弘和会「訪問看護ステーションみなぎ」管理者)

登録日: 2020-11-11

最終更新日: 2020-11-11

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この数カ月で、訪問看護の利用者さんが一気に増えました。その理由として、「新型コロナウイルス陽性患者受け入れ体制確保のための早期退院」の他に「面会制限」も考えられます。

正直言って感染症の陰に怯えて、口腔ケアや摂食嚥下リハビリテーション等がおろそかになっている現状を垣間見ると「医原性の病状悪化が起きる前に早く帰してください」と言いたくなる場合もあります。また、入院すると面会が途絶えることで患者さんやご家族の不安は大きくなり、結果的に入院させたことを後悔することになります。そんな不安を抱えたご家族から相談を受けると「応援するからお家に連れて帰ろうよ」と説得しています。

先日のこと、在宅酸素療法を受けて施設に入所していた高齢女性のAさんが、誤嚥性肺炎で入院しました。食事量が極端に減り、痩せていくばかりのAさんだったので、病院は短時間の面会を許可しました。そんな中で徐々に食べられるようになったAさんとそのご家族に対して、当然のことながら病院は退院を打診します。施設の受け入れも了解されましたが、施設に帰れば再び面会制限で会えなくなると伝えられます。元気になって退院しても施設に行けば会えなくなる。そのことで悩んだ娘さんは、母親を自分が嫁いだ家に連れていく決心をして、私のもとに相談に来られました。「あとどのくらい生きられるかわからない母親を、仕事をしながらでも看ていきたい。その時は訪問看護をお願いできますか」。私の答えはもちろん「喜んでお邪魔させていただきますよ」。

現在、Aさんは施設を退所し、娘さんの嫁ぎ先で療養しています。昼間、Aさんを支えているのは本法人の小規模多機能の介護士さんたちで、私は月に数回訪問看護に入らせていただいています。夜は仕事から帰宅した娘さんと過ごしています。今後、Aさんの病状に変化が起きた場合にどうするかは、まだ話しあっていませんが、後悔なく過ごせるよう応援していきたいと思います。

中村悦子(社会福祉法人弘和会「訪問看護ステーションみなぎ」管理者)[コミュニティナース]

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