厚生労働省が12月2日の中央社会保険医療協議会薬価専門部会に報告した2020年度薬価調査の速報値によると、薬価と市場実勢価格の平均乖離率は約8.0%だったことが明らかになった。過去の結果と比べると、19年度調査の8.0%とほぼ同等だが、同じく中間年となった18年度調査の7.2%よりはやや高い水準。同時に報告された価格妥結率、単品単価取引の割合なども例年と同等の水準だったため、支払側は新型コロナウイルスの影響が外形上は認められないと中間年の改定ルールの検討に早急に着手するよう要請したが、診療側は慎重姿勢を崩さなかった。
投与形態別の平均乖離率は、内用薬9.2%、注射薬5.9%、外用薬7.9%、歯科用薬剤-0.3%。後発医薬品の数量シェアは約78.3%となった。また、調査時点の価格妥結率は薬価ベースで95.0%(19年度99.6%、18年度91.7%)、20年度上期における単品単価取引の割合は、200床以上の病院が83.3%(19年度上期81.4%)、20店舗以上の調剤薬局チェーンは95.2%(97.0%)となった。
調査結果を受けて支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「新型コロナウイルス感染症で注目すべき数字の変化は外形上見当たらず、データ上は薬価改定が可能と考える」との認識を示した。その上で、財政制度等審議会などが、薬価水準が高いために相対的に乖離率が小さくなる先発医薬品も改定品目に含まれるよう、乖離額に着目した改定の実施を提案していることに言及。具体的なルール設定を薬価専門部会で検討するよう求めた。
これに対して、診療側や業界団体の専門委員は、数字上には現れていないものの、価格交渉の期間や回数を十分確保できないなど、新型コロナは医薬品の取引に多大な影響を及ぼしていると反発した。松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、感染の第3波が到来している今、「国民負担の軽減も大事だが、最も優先させるべきは医療提供体制を崩壊させないことだ」と主張。財政審や支払側が求める全品改定や調整幅の見直しなどは、薬価制度抜本改革に関する四大臣合意や中間改定の趣旨を超えるものだと厳しく批判し、改めて新型コロナの影響に配慮した慎重な議論を要請した。
厚労省は議論の終盤で、今後の進め方について、「薬価交渉プロセスも含めた関係者の意見、薬価調査結果を踏まえて中医協の場で十分検討を進めていただき、財政当局とも協議しながら、新型コロナウイルスによる影響も勘案して予算編成過程において十分検討し、決定させていただきたい」と説明した。