医療従事者の皆様方には、日々新型コロナウイルス感染対策への御尽力、心から敬意を表したいと思います。2月後半から約半年間この新型コロナウイルス対策にすべての医療者が一丸となって対応してきました。多くの医療機関で院内感染が生じ、そして「医療崩壊」という言葉があらゆるメディアで報道されてきました。通常医療が妨げられ、医療経済的にも大変な時期が襲ってきました。
こんな時、私が思い浮かべるのは「困っても『困らない』」という言葉です。
私は常々、「人は、様々な困難に出遭った時にどう考え、どう対応するかで評価される」と考えています。「どうしようもない」、「困ったことだ」と思ってばかりいると心が狭くなり、出てくるべき知恵も出なくなります。その結果、原因や責任を他へ転嫁し、不満で心は暗くなり、不平で我が身を傷つけていきます。その一方で、困難を困難とせず、思いを新たに、決意を固く歩んでいけば、困難がかえって飛躍の土台石になることも少なくありません。要は考え方ひとつであり、「困っても『困らない』」ことに人生の妙があるように思います。人間の心は孫悟空の「如意棒」のように伸縮自在であり、困難な時にこそ、かえって自らの夢を開拓する力を発揮いたします。
新型コロナ予防対応で大変なこんな時こそ、著名な先人がどのような考えで人生を歩んできたか。松下幸之助の「道をひらく」、タル・ベン・シャハーの「ハーバードの人生を変える授業」、ジム・ドノヴァンの「誰でもできるけれど、ごくわずかな人しか実行していない成功の法則」を読んでみました。すべてに通ずるのは、①感謝の気持ちを大切に、②素直に、謙虚に、③いつも明るく、ポジティブ思考、④自分を信じて、⑤思ったらすぐ実行、⑥熱意を持って精一杯、⑦損得で動かない、⑧夢を持って、⑨困難を困難と思うな、⑩一陽来復。
特に、⑩の「一陽来復」は松下幸之助の大切にした言葉です。窮地に立つということは、身をもって知る尊いチャンスではあるまいか。得難い体得の機会ではあるまいか。そう考えれば、苦しい中にも勇気が出る、元気が出る、思い直した心の中に新しい知恵が湧いて出る、そして、禍を転じて福となす、つまり一陽来復。暗雲に一筋の日が差し込んで、再び春を迎える力強い再出発への道が開けてくる。
今も今与えられた環境で、このような力強い想いと「困っても『困らない』」心意気で日々の診療、病院運営を行ってゆきたいと思います。