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【識者の眼】「脳卒中と生命倫理」峰松一夫

No.5049 (2021年01月30日発行) P.58

峰松一夫 (公益社団法人日本脳卒中協会理事長、国立循環器病研究センター名誉院長、医療法人医誠会臨床顧問)

登録日: 2021-01-08

最終更新日: 2021-01-08

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私の連載も今回で終了である。最後のテーマは、「生命倫理」である。近年、人生観、価値観の多様化により、患者本人の医療行為に対する希望や意思表示が重視されている。しかしながら重症脳卒中では、急性期の意識障害、あるいは回復困難な重症脳損傷により、本人の発病前あるいは闘病中の意思確認が困難〜不可能となり、他の疾患のような対応はしばしば困難である。

循環器病研究委託費20指定2及び循環器病開発費22-4-1による「重症脳卒中における生命倫理に関する研究班」では、「急性期脳卒中無輸血治療希望事例対応マニュアル」(Jpn J Neurosurg. 2011;20:824-7.)を発表した。研究班を引き継いだ日本脳卒中学会「重症脳卒中における生命倫理プロジェクトチーム」は、2019年に「脳卒中における終末期医療に関するガイドライン」(脳卒中. 2019;41:125-31.)を、2020年に「重症脳卒中救急における治療介入のあり方に関するステートメント」(脳卒中. 2020;42:435-42.)を発表した。後2者は、日本脳卒中学会ホームページにも公表されている。筆者は、いずれも分担研究者、メンバーとして参画した。

詳細については各論文を読んでいただきたい。それぞれ適用条件を明確に定義した上で、①発症前のADL、患者本人の意思についての聴取、②家族等への正しい予後情報の提供、③家族等の選択尊重、④必要に応じて各施設の臨床倫理委員会などでの審議、病院長承認、などのプロセスを経て方針決定を行う。いずれも、「方針決定手続き(フローチャート)」が図示されている。

わが国では超高齢社会の進展に伴い、脳卒中患者(特に後期高齢者層)の急増が予想されている。いわゆる2025年問題、2040年問題である。本人、家族、医療現場が、その時に混乱に陥らないよう、advance directive(将来自らの判断能力が失われた事態を想定して、その際自分に行われる医療行為への意向について事前に意思表示をすること)の考え方を浸透させ、また専門家側も脳卒中に関する正しい知識の普及・啓発に努めるべきである。

峰松一夫(公益社団法人日本脳卒中協会理事長、国立循環器病研究センター名誉院長、医療法人医誠会臨床顧問)[脳卒中]

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