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【識者の眼】「要保護児童対策地域協議会への積極的な参加を」小橋孝介

No.5048 (2021年01月23日発行) P.57

小橋孝介 (松戸市立総合医療センター小児科副部長)

登録日: 2021-01-12

最終更新日: 2021-01-12

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地域で支援が必要と考えられる子どもや家族を多機関で支える仕組みとして、2005年に法定化された「要保護児童対策地域協議会(要対協)」がある。2018年の調査では全国1741の市区町村中、1736(99.7%)に設置されている1)。要対協には様々な機関が参加しており、この中で医療からの参加は、医療機関(病院・診療所)54.2%、医師会等68.4%に留まる。

要対協は①代表者会議(年1回程度各参加機関の代表者が参加する管理的な会議)、②実務者会議(年6回程度各参加機関の実務者が参加し要対協に挙がっている事例の進行管理等を行う会議)、③個別ケース検討会議(随時開催され、個別のケースに関わる関係機関が集まり情報共有、具体的な対応を検討する会議)の3層構造となっている。要対協参加機関には、法律の中で守秘義務が課せられ、民間団体や法律上の守秘義務が課せられていなかった関係機関と、もともと守秘義務が課せられている医療機関か行政機関などで情報共有を行う事が可能となり、隙間のない支援体制を地域で整えることができる。

医療機関は、日常的に子どもに関わる機関である。しかし、2018年度の子ども虐待通告統計では、医療機関からの通告件数は児童相談所で全体の2%、市区町村で全体の2%と非常に少ない。対して、医療機関と同様に子どもに日常的に関わる教育機関からの通告件数は児童相談所で全体の7%、市区町村で全体の17%だった。教育機関は、市区町村に通告となる支援的な関わりを要するケースについて、早期発見し早期支援に繋げている事がわかる。

また、先に厚生労働省から公表された「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」の第16次報告では、死亡事例において医療機関が関与していた事例が47.2%、その中でも医療機関において虐待の認識がなかった事例は37.3%と多かったことが示されおり、医療機関における連携の必要性と子ども虐待への理解を深めるよう推進することが国に求められている2)

医療機関は子ども家庭福祉の中で、子どもと家族を守る重要な役割がある事を自覚しなければならない。積極的に地域の要対協(特に実務者会議、個別ケース検討会議)に参加し、支援的な関わりを要するケースについて早期発見し、地域における早期支援に繋げていく意識を持たなければならない。

【文献】

1)市町村(虐待対応担当窓口等)の状況調査(平成30年度調査)

   [https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160367_00002.html] 

2)子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第16次報告)

   [https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190801_00001.html]

小橋孝介(松戸市立総合医療センター小児科副部長)[子ども虐待][子ども家庭福祉][要保護児童対策地域協議会]

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