No.5049 (2021年01月30日発行) P.53
草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)
登録日: 2021-01-18
最終更新日: 2021-01-18
昨年11月から12月にかけて、北海道では札幌・旭川を中心に大規模な新型コロナウイルス感染症のクラスター感染がいくつも発生した。中でも高齢者が居住する福祉施設におけるクラスターは深刻で、グループホーム、老人ホーム、サービス付き高齢者住宅などで多くの高齢者が感染し、職員にも拡大した。
4〜5月に深刻な病床逼迫を経験した北海道では、そうした施設入居者を当初すべて入院対応した。しかし、感染症の状態は比較的安定していてもADLや認知機能が入院で大きく低下し、入院中の介護はもちろん退院調整に困難を来たし、治療すべき患者の診療機能に深刻な障害が生じた。そのため、今回の第3波では多くの施設において、そのまま施設内で治療を提供し、状態が重くなった場合に対応病院に搬送するという措置をとることとなった。
ただ、この場合に問題となるのは誰が診療するかである。今回は、こうした政策の指揮を執る北海道の担当者が地域の病院あるいは診療所の医師に完全にお願いベースで依頼せざるを得なかったという。けんもほろろに断られるケース、地域を救うためには任せてくれと快諾するケースなど、こうした時にこそ医師のプロフェッショナリズムの本質が見えてくるようだ。
既に、同様の状況は全国的に広がってきている。本来は医師会や病院協会を含む医療系の団体が強力なリーダーシップを発揮し、会員の輪番制で施設クラスターに対応する仕組みを導入すべきだろう。行政は行政で必死に動いている。個人にリスクと責任を預けるボランティアベースでなく、今こそ業界団体も号令一下、リソースを全て使う覚悟で、危機を乗り越える時期だと切に思う。真に状況を悪化させるのは、懸命に動いて失敗する者ではなく、見て見ぬ振りをする者ではないだろうか。
草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]