No.5052 (2021年02月20日発行) P.53
土屋淳郎 (医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)
登録日: 2021-01-21
最終更新日: 2021-01-21
「仕事がテレワークになった」「会議も飲み会もオンライン」と話していた会社員がいたがICT化の波はかかりつけ医にも押し寄せており、講演会や学会はWEB開催に切替わり、MRの面会もオンラインになってきた。
ICT化とは情報通信技術を用いて業務効率化やコスト削減などを図るもので、紙のカルテを電子カルテに置き換えるイメージである。しかし最近では「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」という言葉を見かけることも多くなり、医療分野にも「医療DX」「Medical DX」という言葉で浸透し始めている。「DX推進ガイドライン Ver.1.0」(経済産業省、2018年)によるDXの定義に書かれたビジネス用語をかかりつけ医の言葉に置き換えると、「診療所が医療環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、患者や地域社会のニーズを基に、医療資源やサービス、診療モデルを変革するとともに、業務そのものや、チーム、プロセス、文化・風土を変革し、より身近で頼られる存在になること」となり、「ICT化から一歩進んだ変革」を求められているといえるだろう。
当院では在宅医療に多職種連携システムを利用しはじめてから専門職や患者・家族との情報共有がより良質になり、さらに多職種がこのシステムを利用することで地域包括ケアシステムの構築に向けた活動も行えるようになっている。
また最近ではWEB問診システムの利用も始めた。発熱患者が受診前に発熱状況や症状等を書き込み保険証の写真をアップすることで、患者の滞在時間や職員の感染リスクも減らしている。今後はさらに利用対象者を広げることで発熱患者以外にもそのメリットを享受してもらえる診療フローに変更していくことを考えている。
今年3月にはオンライン資格確認もスタートし、初診を含めたオンライン診療の恒久化も議論されている。もともと診療所のICT化は遅れていると言われていたが、気が付けばICT化を通り越してDXの波が押し寄せているのである。
かかりつけ医にとって患者さんとのふれあいや顔の見える連携はとても重要だが、それらをしにくい時だからこそ、「ITアレルギーだから」とか「セキュリティが不安」とかの言い訳は脇に置いて、押し寄せるDXの波にかかりつけ医としてどう対応するか考えてみるのも良いのではないだろうか。
土屋淳郎(医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)[ICT化の先]