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【識者の眼】「変異株の広がりにより、地域や施設の対応能力がさらに問われてくる」和田耕治

No.5056 (2021年03月20日発行) P.54

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2021-03-12

最終更新日: 2021-03-12

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新型コロナウイルスの変異株に私たちはどう立ち向かえばいいのか。

感染力が強くなっているということはあるが、決して、今まで感染が広がっていないところで広がるようになったわけではない。つまり、市民個人としては、飛沫が飛び交うような3密場面、特に、今後も会食をするような場面の対策が重要である。

この変異株は、公衆衛生の観点からは極めて大きな課題である。感染力が高まっていることで、これまで以上にクラスターが大きくなる可能性がある。高齢者施設や医療機関で何とか抑えていたところでも、今までの対応能力だけでは、突破されて広がるということも起こりえるかもしれない。また、重症化のリスクも高まるという報告もあることから、病床の確保がこれまで以上に必要になってくる可能性がある。

そのため、地域や施設におけるこの1年の対応能力の成果が試されると私は考えている。対応能力を維持することは容易ではない。たとえば4月は人事異動などがある。対応する人が不在になってしまう、責任体制が不明確になるという隙間ですら危機感を持つ必要がある。

そして法令改正により新たに設けられた、まん延防止等重点措置(公衆衛生の業界では“まんぼう”と呼ばれている)という、緊急事態宣言の前に使える措置をどう使うのかがまだ明らかになってはいない。もしかしたら、この「まんぼう」を使う日はそう遠くないという危機感もある。

自治体の判断も第3波においては、迅速にできたところがある一方で、対策の打ち出しが迅速にできなかったところもある。特に首都圏の知事たちには、もう一度意思決定のあり方について見直していただきたい。変異株には今まで以上に迅速な対応が求められる。

このように、個人への呼びかけはそれほど変わらないなかで、感染対策に関して危機感を高める、維持することができるのか。そして、個人の集合体である地域や施設では、対策を強化して行かなければならない。ワクチンへの期待もあるなかで、人々の意識はさらに複雑になっていく。

いずれにしても、様々な場での「リーダーシップ」が求められる。新たなステージにむけて、休みもとりつつ、備えをしたい。

なお、変異株の詳細については下記を参照いただきたい。〈3月12日〉

▶国立感染症研究所「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株について (第7報)」2021年3月3日

 [https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/10220-covid19-36.html

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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