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【識者の眼】「フレイルの評価と処方の方向性」北村明彦

No.5058 (2021年04月03日発行) P.62

北村明彦 (東京都健康長寿医療センター研究所研究部長)

登録日: 2021-03-16

最終更新日: 2021-03-16

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日本老年医学会が2014年にフレイルに関するステートメントを発表して7年が経過しようとしている。この間、医学界での「フレイル」の認知度は高まったものの、臨床の現場でのフレイル評価やその対応については定まっていない。臨床的観点からのフレイル評価の目的は、フレイルの原因疾患の精査、慢性疾患の管理・治療方針への反映、及びフレイル改善のための運動処方、栄養処方等が挙げられるが、そうした対応について、超高齢社会を迎えつつあるわが国の医療現場において、今後どこまで系統的に行っていくかについてのコンセンサスの形成が重要であろう。

まず、フレイルの評価基準をどうするか。疾患ごとの治療ガイドラインで定めていくのか、それとも国際的基準であるCHS基準やfrailty index、簡易評価法としてのclinical frailty scale、簡易フレイル・インデックス等、あるいは行政施策で使用される基本チェックリストや後期高齢者の質問票など選択肢は多い。ただ、いずれの基準であっても留意すべき点は、フレイルとはあくまでも生活機能障害(要介護状態)に陥りやすい状態であって病名ではないということである。フレイルとラベリングされることで社会的偏見や心理的悪影響等を抱く可能性が指摘されていることから、フレイル対策の一般化は慎重に進めることが望まれる。

次に、フレイルと判定された場合の対処については、地域の資源やネットワークの実情によって異なるであろう。原因の精査や治療評価は専門医療機関が主となろうが、フレイル自体の改善には、運動、栄養、口腔、服薬指導、社会参加等の処方が有効とされる。東京都健康長寿医療センターではフレイル外来やフレイル予防教室を設置し、地域の開業医からの受け皿となる計画を進めている。全国的には、行政が進める「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」事業と連携して、地域包括支援センターや一体的実施をコーディネートする保健師等を通じて、様々な介護予防事業とリンクすることが実際的であると考えられる。

北村明彦(東京都健康長寿医療センター研究所研究部長)[高齢者医療]

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