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【識者の眼】「外科医は死ぬまで外科医」野村幸世

No.5064 (2021年05月15日発行) P.62

野村幸世 (東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)

登録日: 2021-04-22

最終更新日: 2021-04-22

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私は現在、日本女性外科医会の代表世話人を拝命している。この会は日本外科学会の男女共同参画委員会が母体となり組織され、外科医師全体の勤務環境改善はもとより、女性外科医の情報交換や協力体制の強化、女性外科医に対する継続就労支援およびキャリア継続と向上のサポート、医学生、女性を含む医師全体、医学界および社会に対する女性外科医師支援に関する教育啓発活動や提言を行うことを目的とした会である。

外科医とはいえ、一生メスを持つわけではない。現役途中で、科を変更したり、開業をしたり、と人それぞれに方向転換はある。そうでなくても、ある年齢になれば、皆、手術を離れる時は来る。そういう時に「もう外科医ではなくなるから」と、上記医会の退会の申し出があったりする。外科医はメスを置いたら外科医ではなくなるのだろうか?

私は外科の臨床もやる傍ら、研究者でもある。研究の仲間には、ベースが外科医もいれば、内科医、生粋の基礎系研究者、理学系、工学系と様々な方がいる。そういう仲間と接していると、やはり、外科医には外科医の価値観や考え方があることがよくわかる。自分とは近いベースの人だと思ったら元は外科医であった、ということはよく経験する。

私が研究の指導を受け、その経験を積ませていただいたのは主に、国立がんセンター研究所支所(当時の名称)と米国バンダービルト大学であるが、そちらにお邪魔できた理由は、自分の希望もあったが、そちらの指導者も私を所望してくれたからである。後から知ったのだが、双方の指導者は元外科医だそうだ。指導者達は、自分と価値観が合うのは外科医であることを認識しておられ、弟子として外科医を採用することに積極的であったようである。

やはり、外科医には外科医の考え方がある。これはメスを置いても変わるものではない。ゆえに、外科医は一生外科医であると私は考える。考え方や価値観はそう簡単に変わるものではない。私が外科医なので、外科医を例にとって記載したが、これは外科医に限った話ではない。あらゆる属性にその矜持はあるものだと思う。

野村幸世(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)[医師のキャリア]

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