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【識者の眼】「ジェネリック医薬品の品質問題の背景にあるもの」坂巻弘之

No.5067 (2021年06月05日発行) P.62

坂巻弘之 (神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)

登録日: 2021-05-11

最終更新日: 2021-05-31

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小林化工や日医工が承認書と異なる製造手順を繰り返していた事件は、両企業に対して、2月9日と3月3日にそれぞれ業務停止処分が下されることとなった。しかし、その後も小林化工の製造販売承認申請データの捏造による12品目の承認取り消しや、日医工の在庫消尽による供給停止など市場混乱は続いている。これらの事件の背景には、品質より出荷を優先したことなど、企業経営者の利益優先の姿勢がある。なお、両事件とも、外部の第三者による調査報告書で当該企業全体のガバナンスに問題があったことが明らかとなっており、ジェネリック医薬品の構造的問題との指摘は当たらない。

しかしながら、当該企業の問題の他にも、査察体制のあり方など医薬品業界全体としての問題が明らかになった部分もある。その一つとして、製造受託や共同開発の問題も明らかとなった。小林化工は、自社ブランド製品以外にも受託製造で他社ブランドの製品の製造も手掛けていた。上述の承認取り消しとなった12品目の中にも自社ブランド以外に4社の製品が含まれており、4社中3社はいわゆる先発企業系の共同開発製品であった。

2005年に当時の薬事法が改正されたときに、欧米の制度に倣って、従来の「製造」承認から「製造販売」承認が導入された。この制度変更により共同開発が可能になり、ジェネリック業界への参入企業も増え、製品数も増えることとなった。自社で製造ラインを保有しなくてもよいことから、先発企業が新たにジェネリック事業に参入する事例も増えた。製造販売承認においては、販売企業が製造企業の監督義務を負うことになっているが、今回の事件では共同開発企業が、開発も製造も品質管理さえも「丸投げ」していたと言っても過言ではない。

共同開発に関わっていた企業から反省や自らの責任を説明する声は聞こえない。行政は共同開発企業にも処分を下す予定とされるが、医療関係者は、今回の事件を機に共同開発にも厳しい目を向ける必要がある。

坂巻弘之(神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)[薬価]

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