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【識者の眼】「感情労働者のメンタルヘルス」山本晴義

No.5067 (2021年06月05日発行) P.63

山本晴義 (労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)

登録日: 2021-05-26

最終更新日: 2021-05-26

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新型コロナウイルスについての電話相談にあたった保健所職員の多くが相談者への対応でストレスにさらされていることが、東北大学災害科学国際研究所の研究グループによって明らかになった。2020年9〜11月に宮城県の保健所職員・関係者にアンケート調査を実施した結果によると、最もハイリスク者が多かった症状は不眠症状で全体の70%にのぼったという。心理的苦痛や不安症状、飲酒問題もあり、ハイリスク者の割合は最前線で治療にあたる医療従事者に匹敵する高さだったとのことである。また、研究グループによると相談者からぶつけられる怒りや不安などのネガティブな感情への対応は、医療従事者にはない保健所職員特有の問題だという。

このように、電話相談員などはいわゆる感情労働にあたる。感情労働とは、他者の感情を変化または維持させるために労働者自身の感情を抑圧して労働することである。自発的な感情の発露を調整するために精神的な消耗が激しいといえる。我々、医師も以前よりも感情労働の側面が強まってきていることを感じる。患者さんの権利意識も強まり、QOLを重視するようになったことが原因だと思われる。

過剰に自分自身の感情をコントロールしていると、本来持っているはずの自然な感情が損なわれることがある。感情の抑制はストレスの原因となり、感情の抑制が続くと不眠や不安状態に陥るという結果もあるので気を付けたい。

感情労働者はプライベートでもしばしば仕事的なペルソナを要求されることが多い。たとえば、教師はプライベートでも先生らしい振る舞いを、カウンセラーやケアワーカーは受容的であったり、優しい人であることを意識せざるをえないかもしれない。

そのため、オンとオフをはっきりさせることを意識する必要がある。自分の時間を意識的に作り、リラックスできる時間は必ず持ちたい。帰宅途中にも仕事のことを考え、思い出してしまうならば全く違うことを考えるようにしたい。たとえば、今後行ってみたい国や名所など、なんでもよい。

また、自分の色々な顔を認め大事にすることが必要であろう。人間にはわがままな顔、ずぼらな顔、したたかな顔など、必ずしも好ましくない様々な顔がある。自分にはこういう顔もあること、そしてそれを否定しないことが大事である。

山本晴義(労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)[感情労働]

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