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【識者の眼】「パワハラ予防に怒りのコントロールを」山本晴義

No.5072 (2021年07月10日発行) P.64

山本晴義 (労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)

登録日: 2021-06-29

最終更新日: 2021-06-29

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厚生労働省が6月に公表した2020年度労災補償状況によると、仕事の強いストレスに伴う精神障害の労災認定は前年度比99件増の608件だった。2年連続の増加で過去最多を更新しており、2020年6月から精神障害の原因として明確に認められたパワーハラスメント労災認定が急増している。

キャリア調査機関のJOB総研による「2021年ハラスメント実態調査」では、社内ハラスメント防止対策を「していない」「しているが不十分」を合わせると9割に上るという。

パワハラ問題が根底にあり、うつで休職している場合、いくら休んでも職場復帰の時期が近づくと不安が強くなり、なかなか治らない。この場合、職場との調整が必須であり、それを行わないことには復帰は困難である。

そもそも、パワハラがなくなれば会社や社員が元気になるというより、会社も社員も元気な会社にパワハラはない。つまり、パワハラをなくすこと=社員のパフォーマンスを上げることである。パワハラを我慢したり、抱え込まないような相談できる体制が望まれる。

さて、パワハラをしてしまう側にも色々なストレスを抱えているケースも多いが、どこにでも怒りをまき散らしている人も存在する。こういう人は大体の場合、前頭前野の中にある思考系の脳番地や偏桃体を中心とした感情系の脳番地等の働きが弱いという特徴がある。また、加齢によるものもある。

もし、最近、怒りをコントロールしにくいという自覚がある場合は予防策もある。それは感情のセルフモニタリングを行うことである。例えば「孫を見ているときは気分がよい」「予定外のことが起きるとイライラする」など、日常のどのような場面で感情の変化が出てくるのか自分で自分を客観的に観察するのである。客観的な視点が身につくと、どのようなときでも冷静な視点が保てるようになる。感情系の脳番地は生涯成長することがわかっている。怒りに限らず感情をモニタリングすることも大切である。本来どのような感情も悪いものではなく、その感情をもとに、どのように行動するかが問題なのであろう。

山本晴義(労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)[感情のセルフモニタリング]

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