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【識者の眼】「コロナ禍の連携を日常診療と災害対策の基盤に」小倉和也

No.5072 (2021年07月10日発行) P.64

小倉和也 (NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)

登録日: 2021-07-01

最終更新日: 2021-07-01

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在宅ケアの現場では、常に連携が求められる。慢性疾患や終末期の在宅医療への移行だけでなく、救急医療や行政、ケアマネージャーとの連携など、その時々の患者や家族のニーズに合わせて迅速に情報を共有し、地域のリソースに合わせながら現状での最善のケアにつなげる。ケアとは医療・介護だけでなく、社会的な問題と様々な制度との兼ね合いや、その人と家族がより快適で安心できる状態をつくるための努力も含め、多職種によるチームの想いと協働の総体であると考えている。

そう考えると、コロナ患者への対応も普段の連携の延長線上にあることが改めて理解される。陽性者が入院ではなく自宅や宿泊施設で療養することを選択したり、選択せざるをえない状況になったとき、どのようにしてその人と家族の健康と生活を支えていけるか? 大きな不安や風評などによる様々な感情を抱えながら、療養期間とその後の生活をより快適なものにしていくためにはどうすれば良いか? そのことを行政や医師会、診療所や訪問看護ステーションなどが知恵を出し合い、地域ごとの資源とのつながりを最大限に生かしながら、コロナ禍の状況を乗り切る体制づくりをすることが、今求められている。

また、コロナ禍は災害という側面も持っている。地震や豪雨などの災害時にも、情報共有と連携が必要となるが、そのための体制とコロナ対策の連携、そして普段からの連携を別々のものとして考えず、状況に応じて微調整しながらも、基本的な部分は同じ基盤や手順に基づいて行えるようにしていくことが、今後の日頃の連携と多様な災害や危機に対応するために、より有益なことではないかと考えている。

現在地元においてICTを活用した情報共有と、オンライン会議やオンライン診療を活用したコロナ対策体制の構築を進めているが、この運用はそのまま今後の在宅ケアにおいて活用することを想定して進めている。病院と診療所があらかじめ情報を共有し、退院時や再入院時にはオンラインでカンファレンスを行い、救急医療との連携のあり方についてもオンライン会議で検討する。コロナ禍で進んだ機能的な体制を、今後日常診療の連携に活用するとともに、様々な課題に対して迅速に対応するための基盤として整備していきたい。

小倉和也(NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)[ICT]

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