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【識者の眼】「来年の診療報酬はどうなる─回復期リハ病棟は覚悟が必要」武久洋三

No.5079 (2021年08月28日発行) P.59

武久洋三 (医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)

登録日: 2021-08-10

最終更新日: 2021-08-10

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新型コロナウイルス第5波が猛威を振るっています。東京ではオリンピックの真っ最中なのに「デルタ株」と呼ばれる変異ウイルスの大流行で、とうとう1日の感染者数が全国で1万人を超えました。特にワクチン接種をしていない若者が多く感染しています。オリンピックが始まるまでに国民へのワクチン供給が不十分であった政権政策によるところが大きいでしょう。いずれにせよ、ワクチンが全国民の70%に接種出来れば落ち着いてくるでしょう。

このような2021年の現状の中、2022年4月の診療報酬改定の審議が粛々と行われています。新型コロナ対応にかかる1年以上に及ぶ国の経費は莫大なものであり、今なお拡大しながら継続されています。このような中で行われる来年の診療報酬改定について、さすがにプラス改定を期待している方は少ないだろうと思います。新型コロナ患者の治療を担ってきた病院の経営状況は、特に公立病院で黒字化しているようですが、新型コロナ患者に直接関わってこなかった主に民間の中小病院は入院稼働率が低下しています。この大きな変化を考慮しながら公平で適切な改定が果たして可能なのでしょうか? 来年の改定に向けて各方面から意向が示されてきていますが、やはり今現在黒字の部分を削って、むしろ赤字の多い部分に少し補填していこうとする姿勢が肯定されるでしょう。

医療費の大きな部分を占めるのは入院です。福祉医療機構が2020年1月に公表した2018年度の病院経営状況を示すデータによると、算定する入院基本料別にみた病院全体の医業収益対医業利益率は、急性期一般入院料1算定病院で2.0%、地域包括ケア病棟入院料1と急性期一般入院料1・2を算定する病院で1.1%、回復期リハ病棟入院料1算定病院で10.3%、療養病棟入院料1算定病院で6.1%となっています。こうなると誰が改定を担当しようと、利益率の高い回復期リハ病棟が基本的に下げられるのではないでしょうか。

出過ぎた杭は打たれるとの例えがありますが、明らかに恣意的に1つの病棟をターゲットに「大幅に点数を下げますよ」とはいかないでしょう。国はリハビリテーションシステムを改良していこうとの掛け声をバックに改善に向けた方向性を示し、その結果として一旦減収してもいずれ増収する可能性があることを喧伝することによって、良い方向へと向かうと錯覚させるような巧みな誘導をするでしょう。それへの覚悟が必要でしょうね。

武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[2022年度診療報酬改定]

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