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【識者の眼】「病床機能に応じた役割を発揮してコロナクライシスを収めましょう」武久洋三

No.5080 (2021年09月04日発行) P.56

武久洋三 (医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)

登録日: 2021-08-19

最終更新日: 2021-08-19

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本格的な急性期でもないのに、急性期の顔をしていた急性期病棟を持つ病院のほとんどがコロナ対応から先ず逃げました。大赤字で常に公から補填を受けている公立・公的病院が保有病床の数%しかコロナ病床を供出しようとしなかったり、2020年は地域の中で信頼を自ら失うような行動をしていた病院もありました。

さすがに、2021年に入ってからは行政も黙っていないで、地域の急性期と信じられている公的・公立病院は協力するようになりましたし、民間病院も日頃から救急医療に熱心な地域急性期病院では、一病棟分をコロナ専用にするなど、協力する病院が増えてきました。

コロナ感染は明らかに急性期の病気です。しかし残念な行動をとる病院もあり、地域での信頼を裏切るような時期があったのは医療人として情けないの一言です。日頃から地域には急性期、回復期、慢性期という3つの代表的な機能の病院群がバランス良く存在しています。

だからコロナであろうとインフルエンザであろうと、発熱が続いたり、少しでも呼吸効率が低下していれば、直ちに入院すべきです。コロナに対する絶対的な治療法が確立していない状況では、これらの患者は先ず急性期病院が受け、障害された呼吸機能を回復させなければなりません。一部の呼吸不全患者には人工呼吸器やECMOが必要ですが、状態が落ち着きPCR陰性となれば、回復期や慢性期の病院がポストコロナ患者を引き受けます。罹患後、20日もすれば症状も改善し、ポストコロナとなります。ここからは全身状態の改善やリハビリテーションの得意な回復期や慢性期病院の出番となります。

このように普通の病気と同じように対応すればよいものを回復期や慢性期病院も怖がってポストコロナ患者の受け入れを躊躇しているから、感染が爆発するとコロナ対応の病床が満タンとなっても、ポストコロナ患者を転院させることができない状況に陥るのです。発熱し息苦しい状態が続いているのに自宅療養なんてもっての外です。まずは隔離が必要なのに家庭内感染し、感染した家族が外で他の人にうつすのです。うかうかしているから1日当たり新規陽性者数が2万人前後になりました。今はすべての対応が後手後手です。無症状の陽性者はともかく、発熱などの症状のある患者は福井県のように体育館などの100人程度の臨時入所施設が必要です。そして全国の病院は、それぞれの病床機能に応じて新型コロナ対応に全面協力することが大切です。

武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[新型コロナウイルス感染症]

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