株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「外来診断訴訟の高リスク:異所性妊娠」徳田安春

No.5082 (2021年09月18日発行) P.65

徳田安春 (群星沖縄臨床研修センターセンター長・臨床疫学)

登録日: 2021-08-30

最終更新日: 2021-08-30

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

異所性妊娠は正常な子宮腔の外に受精卵が着床することで起こる。20世紀後半と比べて、21世紀では増加傾向がある。その増加は次の三要因の増加による。すなわち、骨盤内炎症性疾患や喫煙などの危険因子、生殖医療の利用、診断機器の精度向上による疾患に対する認識だ。

先進国で入院を要する異所性妊娠の死亡率は約10%であり1)、重篤な疾患である。外来診療では、生殖可能年齢の女性が、腹部や骨盤の症状を呈する場合には常にこの疾患を考えることが大切だ。典型的な患者では妊娠6週から10週の間に下腹部痛または骨盤痛と性器出血をみる。しかし、多彩な症候をみる非典型ケースが多く、診断エラーのリスクが高い。

に症候別頻度を挙げる2)。肩痛はピットフォールであり、腹腔内出血での横隔膜刺激による放散痛と考えられている。

生殖可能年齢の女性が、失神、頻脈、ショック症状を呈した場合、異所性妊娠の破裂を疑う必要がある。

体力のある女性が異所性妊娠に罹患したときには、血行動態異常を呈さないことがあり、急性発症の気分不良プラス「単なる頻脈」のみのことがある。早期診断のためには、妊娠検査を迅速に行うことがポイントだ。

気分不良に加えて、血圧と意識レベルの低下などのショック症候は重大な腹腔内出血のサインであり、迅速な輸液ルートの確保と細胞外液急速点滴静注を実施しながら、血液または尿による妊娠反応検査を行うことが勧められる。臨床的に異所性妊娠による腹腔内出血が強く疑われるような緊急時には、直ちに産婦人科緊急紹介により、外科的介入を行うべきである。

【文献】

1)Leke RJ, et al:Obstet Gynecol. 2004;103:692-7.

2)Sivalingam VN, et al:J Fam Plann Reprod Health Care. 2011;37:231-40.

徳田安春(群星沖縄臨床研修センターセンター長・臨床疫学)[診断推論]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top