No.5083 (2021年09月25日発行) P.61
神野正博 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)
登録日: 2021-08-31
最終更新日: 2021-08-31
最近、ダイバーシティ(Diversity、多様性)とインクルージョン(Inclusion、包摂)という言葉が流行り言葉のように世界を駆け巡る。学者ばかりではなく、各国の政府首脳のスピーチなどで、必ず入る言葉となってきた。
7月23日の東京五輪開会式においても、バッハIOC会長はスピーチ(ちょっと長くてヒンシュクだった)で、「Diversityの中で、InclusionとEquality(平等)を持って我々はSolidarity(連帯)する」と言った。差別のない多様性を受け入れ、同化することを訴え、スポーツの平等性をもって連帯しようとするものであった。それ故、開会式もDiversityを意識した出演者、演出であったものと理解する。
また、8月24日の東京パラリンピック開会式で、パーソンズIPC会長はこの競技大会は変革のプラットフォームとした上で、「違いは強みであって弱さではない。ポストコロナの世界は全ての人に機会が開かれる社会でなければならない」とより強く、DiversityとInclusionを意識したスピーチを行った。
五輪の33競技339種目の多くは男女の別のみでバッハ会長のいう平等(Equality)に行われる。一方パラリンピックはクラス分けが多いため、22競技であるものの五輪より多い540種目で競われる。障がいの程度をクラス分けすることで平等性を保とうとするわけだが、クラスによっては参加人数が少ない種目が発生し、平等か? という議論も生まれてしまう。
そこで、世には公平(Equity)という言葉がある。浅学の私からすれば、Equity、Equalityは同じように感じるところだが、調べてみると奥が深い。図の塀の向こうを見る子供たちに、分け隔てなく同じ高さの足台を渡すのは平等だ。一方、その子供たちの高さが同じようになるように背丈に合った足台を渡しているのが公平ということだ。
民主主義の世では平等性が重視されてきた。しかし、『悪平等』という言葉もある。Diversityの時代にあっては、責任も負担も、その人に応分という意味でのEquityが必要だと思う。批判の多い国政選挙の一票の重みも、ワクチン接種の順番も、さらに医療費負担割合もEquityでいいはずなのかもしれない。
神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)[応分の責任と負担]