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【識者の眼】「新型コロナウイルスワクチンと不正出血/月経不順〜説明と初期対応〜」柴田綾子

No.5082 (2021年09月18日発行) P.57

柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科副医長)

登録日: 2021-09-01

最終更新日: 2021-09-01

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新型コロナウイルスのワクチン接種後に、不正出血や月経不順を経験される女性がいるかもしれません。月経が本来の予定日から少しズレたり、出血量が増えたり、閉経後に不正出血が出たという声もありました。現時点では、ワクチンと不正出血/月経不順の因果関係は不明です。不正出血/月経不順は一過性であり自然に治るものがほとんどです。また、ワクチンや不正出血/月経不順が原因で不妊症のリスクが上がることはないとされています。

1. 不正出血/月経不順の因果関係と原因

英国政府の2021年8月16日の報告では「ワクチン接種後の月経異常の発生頻度は低く、関連性は示唆されていない」としています1)。米国産婦人科学会では、環境の変化やストレス等でも一時的に不正出血/月経不順が起きうることを説明しています2)。実際に新型コロナに感染した女性の4人に1人(28%)に月経異常を認めたという報告もあります3)。副反応による体調不良やストレスが原因の可能性もあると考えられています。

2. 初期対応

月経異常に対しては月経量と重症貧血の有無を確認してください。月経2日目(ナプキンやタンポンを1〜2時間で交換しないといけない出血量)が数日続いている場合、血算(ヘモグロビン、血小板数)を確認します。月経異常の多くは自然に改善することが多いです。10日以上性器出血が持続する、月経2日目以上の出血量が続く、3カ月しても月経がこない場合は産婦人科受診を推奨してください。

3. 子宮頸がん検診の確認と推奨を

月経異常や不正出血では、必ず子宮頸がん検診受診歴を確認してください。20歳以上の女性は2年に1回子宮頸がん検診が推奨されていますが、コロナ禍で受診控えが深刻です。 2年以内に子宮頸がん検診を受けていない場合、ぜひ子宮頸がん検診を受けるよう推奨してください。子宮体がん検査は、無症状の女性には推奨されませんが、閉経後の不正出血では推奨されます。

【参考】

▶識者の眼「最新の子宮頸がん検診ガイドラインで変わったこと」(柴田綾子)

 [https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=17156

【文献】

1)GOV. UK:Coronavirus vaccine-weekly summary of Yellow Card reporting(Last access 2021年8月31日)

 [https://www.gov.uk/government/publications/coronavirus-covid-19-vaccine-adverse-reactions/coronavirus-vaccine-summary-of-yellow-card-reporting] 

2)ACOG:COVID-19 Vaccination Considerations for Obstetric?Gynecologic Care(Last updated July 30, 2021)

 [https://www.acog.org/clinical/clinical-guidance/practice-advisory/articles/2020/12/covid-19-vaccination-considerations-for-obstetric-gynecologic-care] 

3)Li K, et al:Reprod Biomed Online. 2021;42(1):260-7.

柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科副医長)[産婦人科]

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