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【識者の眼】「自宅療養者の医療支援におけるICTの利用」土屋淳郎

No.5081 (2021年09月11日発行) P.54

土屋淳郎 (医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)

登録日: 2021-09-01

最終更新日: 2021-09-01

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新型コロナウイルス感染症はデルタ株が猛威を振るい、第5波では1日の感染者数が最多を更新した。これに伴い感染者は入院も宿泊療養も困難となり自宅療養をせざるを得ない状況となっている。保健所や救急隊の対応も限界を超え、自宅療養者に対する医療支援の必要性が高まり、診断医やかかりつけ医による電話・オンライン診療に加えて、往診を行う在宅医の役割が大きくなっている。在宅医療と自宅療養者医療支援は対象者や治療方針が大きく異なっているが、手法に関しては在宅医療で培ったノウハウが活きる。このことから多くの在宅医が自宅療養者への医療支援に協力しており、ICTの利用に関しても在宅医療で使っていたシステムが役立っている。

私の地域(東京都豊島区池袋)では、多職種連携システム「メディカルケアステーション(エンブレース社)」を利用して「自宅療養者医療支援チーム」を立ち上げ、医歯薬看の四師会に保健所職員が加わったタイムラインで全体的な情報共有を行い、往診や酸素濃縮器の利用が必要なケースでは個別の患者タイムラインを用いている。また往診医が出動可能な日時をスケジュール調整システム「ちょー助(ルミックス・インターナショナル社)」に入力して医師の予定を把握しやすくしたり、Web問診システム「SymView(メディアコンテンツファクトリー社)」に患者自身が保険証をアップロードして保険証確認に対応したりすることで、医歯薬看と保健所職員が円滑に情報共有できるようにしている。さらに今後は、抗体カクテル療法の受け入れにあたり、都立大塚病院で在宅患者の一時入院を受け入れる「大塚医療ネットワーク」の仕組みを利用したり、訪問看護師が自宅療養者の健康観察を行うにあたり宿泊療養施設等で用いられている医療介護ネットワークシステム「LAVITA(日本光電社)」の利用を検討したりしている。

東京都医師会でも「curon typeC(MICIN社)」を利用した新たなオンライン診療を始めることを発表しており、自宅療養者への医療支援に様々なICTシステムが利用されている。

感染リスクを減らし円滑な情報共有を行うには、やはりICTの利用が望まれる。以前も述べた通り、災害時には普段使い慣れたシステムを使うとよく、これをベースに地域ごとでシステム構築をすると良いのではないだろうか。この非常事態でも個人情報保護条例が問題になることもあるが、総力戦で乗り切っていかなければならない。いまこそ在宅医療で培ったICT利用のノウハウを活かすときなのではないだろうか。

土屋淳郎(医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)[新型コロナウイルス感染症]

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