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【識者の眼】「コロナのワクチン接種〜『熱が出る予防注射は打ちません』と言われたらどうしていますか?」中村悦子

No.5082 (2021年09月18日発行) P.58

中村悦子 (社会福祉法人弘和会「訪問看護ステーションみなぎ」管理者)

登録日: 2021-09-06

最終更新日: 2021-09-06

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数カ月前、私が住む石川県輪島市でも新型コロナウイルスのクラスターが発生し、高校の寮を中心に121人の陽性患者が出たことは、人口2万5000人足らずの田舎町を震撼させました。その頃、我々医療従事者のほとんどはワクチン接種を終えていましたが、高齢者から優先してワクチン接種の予約が始まっており、コールセンターは大混乱だったようです。ワクチン接種の予約を終えると今度は副反応への対応が待っていました。

厚生労働省が開設したサイト「新型コロナワクチンQ&A」には、「ワクチンを受けた後、症状が出る前に、解熱鎮痛薬を予防的に繰り返し内服することについては、現在のところ推奨されていません」と記されています。しかし、発熱への医療機関の対応にはばらつきがあり、接種後に熱が出て、電話で相談しても「解熱剤を買って様子をみてください」と診療を拒まれることもあったようです。

訪問看護の利用者さんに対して何ができるか、我々も悩んで行動していました。近くに薬局がない地域に住んでいる方もいるので市販の解熱剤の買い置きがなかったり、解熱剤の準備を勧めても「先生からいただく薬しか飲まない」と拒む方もいたり、富山の置き薬があってもどれが解熱剤なのか理解していなかったり、反応は様々でした。

結果的にはほとんどの方が大事には至らず、ホッとしたのも束の間、ある利用者さんが住んでいる地域の民生委員さんから「この地域の住民はみんなワクチンを接種したのに、あの家だけは誰も打とうとしないが大丈夫なのか」という問い合わせを受けました。難病の息子さんと軽度認知症の老親世帯であるその家は、インフルエンザの予防接種も拒み続けていました。老親は言います。「今までコロナにかかったことはないし、熱が出るような、そんな恐ろしい注射は打ちません」

そのお宅は訪問診療、訪問入浴、訪問介護、訪問リハビリ、そして訪問看護の他に、月に10日間のショートステイも利用されています。

意思決定支援ってなんでしょうか。本当に迷うところです。

中村悦子(社会福祉法人弘和会「訪問看護ステーションみなぎ」管理者)[意思決定支援][コミュニティナース]

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