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【識者の眼】「『ザイタク医療』⑧〜訪問診療と往診〜」田中章太郎

No.5082 (2021年09月18日発行) P.64

田中章太郎 (たなかホームケアクリニック院長)

登録日: 2021-09-08

最終更新日: 2021-09-08

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当院が立地する兵庫県に4度目の緊急事態宣言が出ている中、新型コロナウイルス感染症の方の自宅療養が注目されている。一方、自宅療養を不安視する声も多く、在宅医療の実際があまり知られていない事を痛感した。それでも、感染者数増加に伴い、治療場所が病院から在宅にシフトしている印象だ。実際、新型コロナウイルス感染症の治療において、他の多くの病気同様、早期診断・早期治療が有効である為、自宅療養での医療の早期介入が可能となれば、死者数も大幅に減少できるだろう。その為には、どのような政策が大切なのかはここでは触れずに置く。おそらくこの原稿が掲載される頃には、そのような方向に向かっているだろう。

今回は、在宅医療は早期診断・早期治療の方針に沿うことが出来る医療である事をお伝えしたい。

在宅医療の両輪は、訪問診療と往診である。訪問診療とは定期的に患家を訪問し診療する。往診は状態が悪くなった時、求めに応じて対応する診療であり、訪問診療とは意味が違う。訪問診療で大切な事は、予知的診断と日常生活全般の評価、そして、自宅療養において力を発揮するチーム医療の構築だ。また、往診で大切な事は、24時間365日オンライン(特に電話)で対応し、状況に応じて、往診、もしくは指示により訪問看護等で対応できる事。補足すると、訪問診療時、患者を含めた家族と共に、緊急対応(レスキュー等)や往診必要時の緊急連絡の仕方(医師への電話)の練習を行う。また、往診を要する状態にならない様、予防的なアプローチにも取り組む。さらに、関わる全ての職種とも、それらを共有し患者・患者家族と共に取り組む。

今回、この訪問診療の事があまり知られていない為、コロナ自宅療養における早期診断・早期治療ができずにいると感じる。訪問診療は在宅医療を始めた頃、やはり、よくわからず難しかったことを記憶している。それは、医療検査機器等がない中で、聴診器による聴診や患者の雰囲気、家の匂い、片付け具合、家族の様子、等々、病院医療とは違った医療情報により、患者の状態を把握・予測して治療に当たらねばならないからだ。その曖昧な医療情報に基づいて、科学的判断を要する。コロナ自宅療養においては往診以上に、訪問診療の能力が問われるだろう。

今回のコロナ禍で、在宅医療とはどういうものなのかを広く認知してもらえる様に努力しなければいけない事を再認識した。ザイタク医療への道はまだまだ続く。

田中章太郎(たなかホームケアクリニック院長)[在宅医療]

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