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【識者の眼】「後継の後継を考える」野村幸世

No.5087 (2021年10月23日発行) P.64

野村幸世 (東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)

登録日: 2021-10-01

最終更新日: 2021-09-29

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私には中学生と小学生の娘がいる。親が言うのもなんだが、お陰様で、二人ともなかなか精神的にも健康面でもたくましく育っている。私は産休明けから勤務したので、二人とも生後9週から保育園児である。幸いにも東大病院には職場内保育所があったので、私は仕事の合間に授乳に通い、二人とも完全母乳で育てることができた。

昨今、病院や医院を経営している複数の知人から、半分冗談かもしれないが、うちの子供を養子に欲しいという希望があった。中学生の上の娘は「まだ医師になると決めたわけでもないのに」と苦笑していた。私としても、子供達それぞれの人生は本人がきちんと判断できるようになってから自分で決めれば良いと思っているので、もっと大人になってからの話である。

さて、養子にと所望してくださる友人方は現在、既に成人したお子さんが病院を継ごうとされておられるのだが、その次の世代がおられないのである。最近の少子化の一端であり、残念なことであろう。男女共同参画の進歩により、女性医師が増加しており、とても歓迎すべきことである。私にも女性医師の友人が増えてきた。そういう友人と話をしていてよく聞くことだが、ご自分の両親がご家庭できちんと男女共同参画されていないと、どうも仕事をしつつ結婚して家庭を築くことが想像し難いと言うのである。つまり、お父様が外で働き、お母様が家事、育児という役割分担をしていると、家事を半分分担する夫が想像しにくいということであろう。

私は幸いにも両親が共働きであったため、家事も両親がやっており、現在、パートナーと自分が家事、育児を分担することになんの抵抗もない。私のパートナーのご両親も共働きであった。うちの子供たちはこれが普通だと思っている。

男性医師には、外で働くことと家事、育児を、配偶者と役割分担されておられる方も多いであろう。その方法で、配偶者とご自身はお互い納得した人生と思われているかもしれない。しかし、次の世代、その次の世代のことを考えると、女性の社会進出に見合うような家庭運営の姿を見せるべきではないであろうか。それがお子さんのmotivationとなり、ご家系の存続に影響するものと思う。

野村幸世(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)[男女共同参画]

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