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【識者の眼】「対面会議よ、さようなら」岩田健太郎

No.5090 (2021年11月13日発行) P.58

岩田健太郎 (神戸大学医学研究科感染治療学分野教授)

登録日: 2021-10-29

最終更新日: 2021-10-29

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未だに会議、会合のときに「現地で対面で」と要請されることがある。役所関係が多い。

コロナ以前の時代には移動のために膨大な時間を犠牲にしていた。例えば、東京への往復は新幹線を使っても、飛行機を使っても、だいたい神戸の自宅から往復で7時間とかそれ以上かかる。これは膨大な時間のロスだ。コロナ以前から宿泊を要する出張は極力断ってきたが、もしそれでも宿泊が必要な場合は24時間以上のタイムロスになる。

もちろん、新幹線の中でもWi-Fiはあるし、仕事もできる。しかし、車内での仕事はオフィスや自宅での仕事よりも生産性は落ちる。机は小さいし、Wi-Fiは遅いし、いざというときに取り出せる書棚も傍らにはない。オフィスのコンピュータはデスクトップで2画面使っているからマルチタスクが容易だが、ノートブックパソコンではこのような作業は簡単ではない。ちょっと迷ったときに相談できる人もいない。日本では車内で電話もしづらい。

もう一つ、多くの「昭和な」人たちが忘れていることがある。それは、出張とはダブルな時間の損失だということだ。つまり、僕が移動で費やす時間は、そのまま家人が家事、育児をカバーしなければならない時間、ということだ。普段は分担してつくっている食事、分担している洗濯などもすべて「ワンオペ」になる。家人の業務は圧迫され、その仕事は滞る。家人が出張するときは、今度は僕のほうが「ワンオペ」状態になる。「男女平等なんたら」とか「女性が輝くなんちゃら」とか、スローガンばかりが喧しいが、そのくせ、こういう基本的な「ダブルな損失」についてはまったく考慮されない。

これは、延々と退屈な議題で時間を食いつぶす、生産性のない会議「そのもの」についても同様だ。そもそも、リモート会議のほうが意思決定のスピードが速く、より理性的に意思決定しやすい。「対面会議じゃないと嫌」と駄々をこねる連中には非理性的な人が多い。「その場の空気」を醸成しないと議論がまとまらないタイプだ。理路よりも空気、なので意思決定で間違えやすいし、「議論を尽くした、やった感」が好きなので会議がノビノビになりがちだ。

それでも対面じゃないとイヤイヤ、なダイナソーは、まあいい。けど、せめてリモートは選択肢に入れてほしい。あなたの世界観をこっちに押し付け、こちらの生産性を邪魔しないでほしい。足を引っ張らないでほしい。毎日、そう思っている。

岩田健太郎(神戸大学医学研究科感染治療学分野教授)[生産性]

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