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【識者の眼】「今こそHPVワクチンの接種回数の見直しを」柴田綾子

No.5094 (2021年12月11日発行) P.59

柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科医長)

登録日: 2021-11-25

最終更新日: 2021-11-25

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2021年11月12日に厚生労働省の厚生科学審議会 (予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会)にて、HPVワクチンの積極的接種勧奨差し控えを終了する、と発表されました。実は今、世界中でHPVワクチンの需要が高まっており、新型コロナのワクチンと同様、世界中でワクチンが取り合いになる可能性があります。WHOは2019年に女性を優先させるために、男性への接種推奨を控えるように発表し、IPVS(国際パピローマウイルス学会)では、2025年までワクチン不足が続く可能性を発表しています1)。そんななか、いまだにHPVワクチンを3回も接種しているのは日本だけかもしれません。

◆世界的にはHPVワクチンは2回接種が主流

日本では定期接種として12〜16歳の女性を対象に3回接種が行われています。一方、医学的には14歳までにHPVワクチンを接種すれば、2回接種で3回接種と同等の抗体価が取得できることが報告されています2)〜4)。米国、英国、オーストラリア、WHOでは14歳以下は2回接種が基本となっています。2回接種の場合は、2回目は1回目から5〜24カ月後の間で接種します(国によって違います)。1回目の接種を15歳以降で開始した場合は、十分な抗体価を得るためには3回接種が必要と考えられています。

◆1回接種でも十分となる可能性も出てきた

さらに最近の研究では、1回接種でもHPV感染を予防するのに十分な抗体価がつく可能性も報告されはじめています。JAMAの米国1620人を対象にした横断的研究5)、プレプリントですが2275人を対象にした最近のRCT研究6)では、1回接種でもHPVの感染リスクを十分に減らせる可能性が報告されています。

ワクチン接種は副反応に加えて医療資源や費用も伴います。可能な限り最小限の回数で目標効果に到達するほうが理想的です。日本でも早急にHPVワクチンの接種回数について見直しを行い、世界的ワクチン不足の中で必要な人に十分量のワクチンが届けられる体制ができることを望みます。

【文献】

1)Garland SM, et al:Papillomavirus Res. 2020;9:100195.

2)Sankaranarayanan R, et al:Lancet Oncol. 2016;17(1):67-77.

3)Iversen OE, et al:JAMA. 2016;316(22):2411-21.

4)Romanowski B, et al:Hum Vaccin Immunother. 2016;12(1):20-9.

5)Sonawane K, et al:JAMA Netw Open. 2019;2(12):e1918571.

6)Barnabas R, et al:ResearchGate.November 2021. DOI:10.21203/rs.3.rs-1090565/v1.

柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科医長)[HPVワクチン]

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