No.5095 (2021年12月18日発行) P.56
神野正博 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)
登録日: 2021-11-30
最終更新日: 2021-11-30
新型コロナウイルス感染症まん延の中で、今年の7月23日に強行された東京2020オリンピック開会式で、IOCバッハ会長は、“多様性(Diversity)の中で、包摂(Inclusion)と平等(Equality)を持って連帯(Solidarity)しよう”と高らかに宣言した。
まさに、コロナ対応ということで、全世界がロックダウンや密接・密集・密閉を回避する行動制限、消毒、手洗い、うがいの実施、そして感染して死亡した者への共通した深い悲しみと、恐らく全世界の人類が有史以来、初めて一致した連帯を経験したのではないだろうか。先のバッハ会長の連帯も、コロナ対策とオリンピックの成功への連帯を強調したものだったのだ。
しかし、昨今はどうだろう。コロナ対策での連帯がほころび始めてきている。それは行動制限への不満、それ以上にワクチン接種の可否をめぐる分断だ。特に欧米では、ワクチン接種と自由を二律背反するものという考え方だ。ワクチン接種義務化の動きをファシズムと同一視する動きであり、激しいデモ隊が治安警察と衝突する。ここへきて、したたかなコロナウイルスが人類を分断(Division)しようとしているのだ。
オミクロン株をはじめ、新たな強力な変異株も流行しようとしている。もう一度、対コロナで連帯できないものか。その連帯のための唯一の共通の言葉は『利他の心』(他人を利する=他人を思いやる心)ではないだろうか。デルタ株を抑え込んだ日本でこそ『利他の心』を持ってコロナ対策ができるのではないだろうか。
神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)[新型コロナウイルス感染症]