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【識者の眼】「高齢者における栄養評価の重要性」小川純人

No.5099 (2022年01月15日発行) P.64

小川純人 (東京大学大学院医学系研究科老年病学准教授)

登録日: 2021-12-01

最終更新日: 2021-12-01

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高齢者では、生理的な食欲低下のほか、疾患的・環境的・薬物的な要因など、様々な要因や背景によって低栄養を認めやすい。また、低栄養自体がフレイルや身体・認知機能障害とも関連し予後不良の指標にもなりうる。そのため、高齢者における栄養状態の評価とそれに基づく早期からの適切な介入は重要である。また、高齢者における低栄養の特徴のひとつとして、蛋白質および総エネルギー量が欠乏したProtein Energy Malnutrition(PEM)が挙げられる。

近年、こうした医療やケアにおける栄養の重要性が一層認識されるようになり、診療報酬上も栄養サポートチーム加算、摂食嚥下支援加算、外来栄養食事指導料、在宅患者訪問栄養食事指導料の改訂・拡充など、管理栄養士・栄養士をはじめとする多職種協働の役割の重要性やICTなどの情報通信機器の活用も進みつつある。また、低栄養の世界的な診断基準についても、2018年にESPENなどの複数の学会によってGLIM基準として発表された。GLIM基準では、現症(意図しない体重減少、低BMI、筋肉量減少のいずれか)および病因(食事摂取量減少/消化吸収能低下、疾患による負荷/炎症の関与のいずれか)に該当すれば低栄養およびその重症度判定に至る流れになっている。このほか、実際的な高齢者の低栄養スクリーニングや栄養評価に際しては、Mini Nutritional Assessment(MNA®)や主観的包括的アセスメント(subjective global assessment:SGA)など、比較的簡便な方法を用いる場合も少なくない。その際、まずは栄養リスクの有無について評価を行い、リスクありと判断した場合には客観的方法で栄養障害の程度に関する栄養アセスメントを実施する。

栄養アセスメントに際しては、身体計測では現体重ならびに体重変化、四肢筋肉量の推定値などから評価し、血液検査では、血清蛋白質等により栄養障害の程度評価を行う。また、栄養指標の経時的変化も大切であり、時にアルブミン(半減期17〜23日)だけでなくプレアルブミン(半減期1.9日)などのrapid turnover proteinを用いた評価も活用される。栄養計画作成の際には、まず総エネルギーの必要量を決定し、蛋白質投与量、脂質投与量、糖質投与量を求めた上で栄養投与経路や水分量についても決定する。実際に栄養を投与した後は定期的な栄養評価を行い、改善に乏しい場合や病態・身体活動度の変化、新たな合併症などを認めた場合には、その都度栄養計画を見直すアプローチが大切である。

小川純人(東京大学大学院医学系研究科老年病学准教授)[老年医学][栄養]

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