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【識者の眼】「日本に必要な『リプロダクティブ・ライツ』とは」柴田綾子

No.5099 (2022年01月15日発行) P.63

柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科医長)

登録日: 2021-12-15

最終更新日: 2021-12-15

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「リプロダクティブ・ライツ」とは、生殖(妊娠・避妊・中絶)に関する自己決定権で、すべての人が生まれながらにして持つ人権の一部です。人は、年齢・性別・人種・地位にかかわらず、妊娠する/しない、避妊する/しない、中絶する/妊娠を継続することを自分の意思で決める権利があり、それを決めるために必要な「情報と手段」を得る権利があるとされています。このリプロダクティブ・ライツは1994年にエジプト・カイロの国際人口開発会議で提唱されました。それから20年以上経ちましたが、日本ではまだまだリプロダクティブ・ライツが実現できていない事象があります。

①避妊法への制限

避妊ピルは自費で高額。未成年単独での避妊ピルの購入が(地域や施設によっては)困難。

海外では使用できる避妊法(貼付剤、皮下埋め込みインプラント、腟内リング)などが日本では承認されておらず使用できない。

②緊急避妊への制限

緊急避妊ピルは自費で高額(1回1〜2万円)。地域によっては夜間や休日に手に入りにくいことがある。未成年単独での緊急避妊ピルの購入が(地域や施設によっては)困難。

③人工妊娠中絶

人工妊娠中絶に配偶者の同意が必要(母体保護法第14条)。人工妊娠中絶の経口薬が使用できず、手術しか選択できない。人工妊娠中絶手術が自費で高額。

④性教育

避妊・妊娠・中絶について自分で決めるためには、正しい情報を知っておく必要がある。

ところが日本の中学校の学習要領は「妊娠や出産が可能となるような成熟が始まるという観点から、受精・妊娠を取り扱うものとし、妊娠の経過は取り扱わないものとする(はどめ規定)」とし、避妊法は学習要領に入っていない(コンドームは避妊ではなく性感染症予防として学ぶ)。高校の学習要領でも「生殖に関する機能については、必要に応じ関連付けて扱う程度とする」と、社会に出る前に正しい性の知識を学ぶ機会が与えられていないのが現状。

リプロダクティブ・ライツは、すべての個人とカップルが持つ権利です。特に避妊・妊娠・出産・中絶は女性の身体に起こるものであり、女性の意思や希望が尊重される必要があります。日本でも、リプロダクティブ・ライツを尊重した政策と性教育の実現が必要だと思います。

〈宣伝動画〉「女性のヘルスケアとテクノロジー〜直面する課題をどう解決するか?〜」では、コロナ禍の中で浮き彫りになった女性の健康課題としてリプロダクティブ・ライツの問題も取り上げて解説しています。
▶ https://www.jmedj.co.jp/movie/detail.php?id=7 
動画への感想やリクエストをぜひお教えください。
▶ https://www.jmedj.co.jp/questionary/form.php?id=60 

【参考資料】

▶松本清一(監):性と生殖の権利. 翻訳IPPF.

 [https://www.ippf.org/sites/default/files/ippf_sexual_rights_declaration_japanese.pdf

▶文部科学省:平成29・30・31年改訂学習指導要領.

 [https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.htm

柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科医長)[生殖に関する自己決定権]

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