No.5098 (2022年01月08日発行) P.56
志賀 隆 (国際医療福祉大学救急医学主任教授、成田病院救急科部長)
登録日: 2021-12-21
最終更新日: 2021-12-21
現在オミクロン株がアフリカに加えて、ヨーロッパ、北米などで流行しており、一度コミュニティーに入ってきた場合には大流行が避けられないと考えられます。ニューヨーク州は12月17・18日両日ともに2万名(17日でほぼ2倍に)を超える患者さんが発生しています。また、ICUについても12月18日の時点で77%が既に埋まっていて(このうちコロナはまだまだ多数派ではないようです)、非常に厳しいとされる85%に急激に近づいています。重症化の割合も大事ですが、数が増えることによって地域のキャパシティが直ぐに厳しくなる、この病気の特徴がよく現れています。既にニューヨーク州では延期できる手術は延期する指示が出ていますが、コロナ以外の病気で重症になると十分なケアが受けにくい状態になりつつあると考えられます。
これだけの大流行が起こる前提とすると、日本でも、やはり第5波のように各所でオーバーヒートが起きる可能性があると思って準備をするのがよいと思います。まずは、市中感染が起きた際に保健所での登録・連絡作業と健康観察が一気に増えます。この2つの業務は患者数が少ないときには両立可能なのですが、急に増えると難しいので各地域がつくり上げた応援体制を再稼働する必要があります。
次に、抗体療法の体制です。自宅やホテルなどの施設で待っている間に悪化して病院に来た際には既に重症で人工呼吸器を使用することが多いのがこの病気の特徴です。病院に入院する前に治療を開始できることが重要になります。抗体カクテル療法の効果はあまり期待できませんが、ソトロビマブは効果があるデータが出ています。
ホテル、臨時医療施設、病床の確保のための交渉を始め、それぞれの自治体で予算確保をしてベッドを確保していく必要があります。ワクチンの効果が減じてしまうため、第5波よりも必要数を大きく見積もる必要があるでしょう。
各医療施設では、「コロナには関わらない!」という人をいかに減らしていくか? 施設全体の問題として、1人ひとりが直接的にコロナ患者さんの対応をしないとしても、「発熱外来を助ける」「検体採取に関わる」「カルテ回診中心でもコロナ診療に関わってもらう」などの工夫を進めることが求められます。12月から準備しておいたほうが良いと思います。
志賀 隆(国際医療福祉大学救急医学主任教授、成田病院救急科部長)[新型コロナウイルス感染症]