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【識者の眼】「年賀状にまつわる夫婦別姓の話」野村幸世

No.5098 (2022年01月08日発行) P.64

野村幸世 (東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)

登録日: 2021-12-22

最終更新日: 2021-12-22

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また、年賀状の季節がやってきた。暮れは忙しい季節であり、この時期に年賀状を書くのは、なかなか大変なことである。2020年は母が他界したために、11月の喪中欠礼の挨拶で済んだが、今年は年賀状を書かなくてはならない。

わが家が夫婦別姓であることは以前にも書いた。母が他界して、わが家の表札も少しモダンなものにつくり替えた。主人と私の両方の苗字が記載されているが、多数決により、私の苗字が上である(子供は野村姓)。女性医師には俗称として旧姓を名乗っておられる先生も多い。たまにこのような先生にお出しした年賀状が「宛先不明」で戻ってきてしまうことがある。どうやら、表札としては、本名の苗字しか出していないために起こったことらしい。そうすると、出し直したり、直接お渡ししたり、とやや迷惑である。俗称を名乗るのであれば、家族で話し合って郵便屋さんにも俗称がわかるようにしていただきたいものである。

わが家の年賀状の差出人は主人の名前、私の名前、長女、次女の名前という連名である。こちらは、年齢の順である。

先日、職場でお世話になっており、年賀状のやりとりのある他科の教授から喪中欠礼のご挨拶を受け取った。ところが、宛名は私の主人一人の名前となっており、受け取った主人から、「この人、知ってる?」と聞かれ、「ああ、これ、私宛」という会話があった。この葉書をくださった先生は、もちろん、私の顔と名前は一致している方で、恐らく、欠礼の葉書はご家族が代わりにお出しになったことが想定される。そのご家族は、先生への年賀状の差し出し人が男性である主人だと思い込むのもアンコンシャスバイアスと思うと同時に、代わりに欠礼の葉書を出してくれる秘書がご家族におられて楽なもんだな、と思ってしまった。

このような、恐らく、家に帰ったら「上げ膳据え膳」の方の業績と業績量を比較される場合、「上げ膳、据え膳」の方の業績量はご家族と2分して、1/2掛けで比較して欲しいものだと思ったりもするのである。

野村幸世(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)[男女共同参画]

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