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【識者の眼】「かかりつけ医のあり方を再考へ」草場鉄周

No.5099 (2022年01月15日発行) P.60

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2021-12-24

最終更新日: 2021-12-24

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先日、厚労省医政局総務課が所管する「かかりつけ医機能の強化・活用にかかる調査・普及事業検討委員会」の第1回委員会にプライマリ・ケアの専門家の立場で参加した。議論の内容は非公開ということで、詳細を語ることは難しいのだが、初回は参加した委員が幅広く意見を述べるというものであり、実に多様なテーマが論じられた。

中でも、「かかりつけ医」と「かかりつけ医機能」は同じ用語を使っていても異なる概念ではないか、という問題意識が非常に印象的であった。「かかりつけ医機能」は日本医師会・四病院団体協議会が2013年に提言したもので、既に多くの方がご存じのように、生活背景をふまえた診療と保健指導、必要な場合は他の医師・医療機関と連携、診療時間外での患者対応、地域での社会活動と保健・介護・福祉との連携、そして、在宅医療の推進、最後に患者・家族へのわかりやすい情報提供、と示されている。筆者は、この定義についても「対応可能な症状や疾患が具体的に明示されていない」点に問題があると考えているが、それ以前により大きな問題があった。

つまり、これを「かかりつけ医」がすべからく持つべき機能とは原理的にできないという問題である。本来、「かかりつけ医」は患者が決めるものであり、医師が決めるものではない。たとえば「目のかかりつけ医」、「皮膚のかかりつけ医」、「腰痛のかかりつけ医」と複数持つのも問題ないし、「〇〇大学病院の心臓血管外科のかかりつけ医」がいるのも当然である。その場合、すべてのかかりつけ医にかかりつけ医機能を持たせる意味があるとは考えにくい。理想はそうかもしれないが、ある特定の健康問題をしっかり治療すること以上の対応を、現在の日本の多忙な外来診療で期待することはきわめて難しい。それが、市中の医師の本音だと考える。

となると、「かかりつけ医機能」を持つ医師をどう定義し、そのグループをどう国民が他の医師と区別して認知するのか、という問題が生じる。現在、日本にはそうした仕組みがないが、この検討会ではそうしたテーマにも踏み込んでいかざるをえないだろう。プライマリ・ケアの立場からはこの本質的な議論がオールジャパンで地に足をつけて進むことに期待したい。

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]

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