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【識者の眼】「経口ウイルス薬はCOVID-19終息の切り札になりうるか」栁原克紀

No.5099 (2022年01月15日発行) P.60

栁原克紀 (長崎大学病院検査部教授・部長)

登録日: 2021-12-27

最終更新日: 2021-12-27

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが始まって2年が経過した。2021年12月の報告では、世界における感染者数が約2億7000万人、死亡者は約530万人と未曾有の大災害となっている。新たな変異株であるオミクロン株の出現もあり、終息の兆しは見えていない。

今後、大きな役割を果たすことを期待されるのが、経口薬の開発である。先行しているモルヌピラビル(MSD)は英国では承認済みあり、パクスロビド(ファイザー)は米国等で申請中である(12月12日時点)。中和抗体薬を除く薬剤が、他の疾患で用いられていたものを流用していたのに比べ、これらはCOVID-19専用に開発された。モルヌピラビルはRNAポリメラーゼ阻害、パクスロビドはプロテアーゼ阻害と作用機序は異なるものの、両者とも優れた抗ウイルス活性を有する。大部分の患者が軽症であり、外来での経口薬治療は望ましい。医療機関に患者が行くことなく、自宅・宿泊所療養の人でも投与可能という面では、中和抗体薬より使いやすい。投与により重症化および入院する症例が大幅に少なくなることが報告されており、病床逼迫の抑止にも一役買いそうである。重症者に対しても既存薬との併用投与も可能となり、治療の幅は広がってくる。わが国でも使用できる日は近く、期待が寄せられている。

注意すべきは、感染した患者を治療する新薬の開発と感染予防は別の次元で考えるべきという点である。感染対策を大幅に緩和して、感染者が急増した諸外国が良い教訓である。マスク、手指消毒などの対策はしっかり継続していく必要がある。3回目のワクチン接種(ブースター接種)も重要である。

新規経口ウイルス薬は、COVID-19の診療に大きく貢献することは間違いなく、治療指針の策定や正確な情報提供が必要になるであろう。感染対策を十分に励行しながら、新薬を適切に使っていくことでCOVID-19の終息に近づけるものと思われる。

栁原克紀(長崎大学病院検査部教授・部長)[新型コロナウイルス感染症][敗血症の最新トピックス

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