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【識者の眼】「感染者の隔離期間の短縮が再び議論へ」倉原 優

No.5100 (2022年01月22日発行) P.56

倉原 優 (国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)

登録日: 2022-01-07

最終更新日: 2022-01-07

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パンデミック当初、新型コロナの入院患者は、PCR検査が2回陰性にならないと退院できなかった。そのため、陰性が出るまで幾度となく検査を繰り返し、その結果コロナ病棟のベッドが空かないため、新規入院を受け入れられない問題があった。2020年5月に、「発症日から14日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した場合」という文言が追加されたが、6月には早々に「10日間」へと短縮された。以後、新型コロナと診断された患者の隔離期間は、原則「発症後10日間」がスタンダードとなり、これは長らく変更されていない。

しかし、2021年12月末に、米国疾病予防管理センター(CDC)が新型コロナ陽性者や濃厚接触者の隔離期間・自宅待機期間について、「5日間」へ短縮する推奨を発出した1)。新型コロナのほとんどの感染は、発症1〜2日前から発症2〜3日後の間に起きている。ゆえに、発症あるいは陽性と判明してから5日間経過すれば、感染リスクは比較的少ないとされている。イギリスにおいても、新型コロナ患者の自主隔離期間は10日間だが、たとえば隔離から6日目以降に24時間以上の間隔を空けて2回の抗原定性検査が陰性なら、これを7日間にまで短縮可能としている2)。もちろん、CDCもたとえ5日間へ短縮させたとしても、「人がいるところでは10日間のマスク着用を推奨」しているわけだが、パンデミックから2年が経過し、ウイルスの挙動に関して新たな知見が加わったというよりも、医学的な妥協点をさぐった形に見える。世界的な隔離期間の短縮化の動きは、それだけ経済が痛んでいるという証拠なのだろうと思った。

ただ、オミクロン株が相手でこれが通用するのかどうか甚だ疑問ではある。日本は、世界保健機関(WHO)の基準に追随する傾向にある。国際的に隔離期間が短縮化に動くようであれば、日本でもいずれ「発症後10日間」から短縮する方向に舵を切るかもしれない。あるいは、オミクロン株が市中に広く感染し続けると、感染者や濃厚接触者の数が多すぎて社会生活がまともに営めない可能性も出てくるため、さらなる救済策もありうる。

【文献】

1)CDC Updates and Shortens Recommended Isolation and Quarantine Period for General Population.

   [https://www.cdc.gov/media/releases/2021/s1227-isolation-quarantine-guidance.html

2)Self-isolation for COVID-19 cases reduced from 10 to 7 days following negative LFD tests.

   [https://www.gov.uk/government/news/self-isolation-for-covid-19-cases-reduced-from-10-to-7-days-following-negative-lfd-tests

倉原 優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)[新型コロナウイルス感染症

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