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【識者の眼】「これからのコロナの波と救急医療体制の維持」薬師寺 泰匡

No.5100 (2022年01月22日発行) P.56

薬師寺 泰匡 (薬師寺慈恵病院院長)

登録日: 2022-01-13

最終更新日: 2022-01-13

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コロナ第6波が沖縄に迫り、あっという間に1日の感染者数が1000人を超え、追随するように日本各地で感染者が増加した。ワクチンの効果もあってか重症者数は以前ほど多くはないものの、酸素が必要となる中等症の患者は一定数発生している。また、医療従事者の間で感染が広まり、濃厚接触者としての就業制限も相まって、医療提供体制の維持が困難となった。病棟閉鎖の他、外来診療、救急医療の制限をせざるをえない状況が重なり、コロナ対応だけでなく、平時の医療を継続することもできなくなってしまった。諸外国では既に同様の事態が発生しており、国内で同様の状況に陥ることは自明であった。どうすればこの状況を打破できるだろうか。

日本は幸いなことに、平時はいつでも誰もが救急医療にアクセスできる環境にあるが、このリソースが危機に瀕した場合、需要と供給のバランスを整えなくてはならない。残念ながら供給は増えるどころか低下しているのが実態であり、通常ギリギリの状況であった救急医療を突然拡充させるのも困難な話であるため、需要の調整が求められる。

救急要請されても搬送できない状況に至った場合は、各自治体の首長から速やかな情報共有が望まれる。緊急事態宣言では感染者は減らないという不満にも似た指摘が社会に溢れていたが、社会活動が制限された結果、救急搬送される患者数は減った。それでも第5波までのコロナ対応は厳しいものであった。健康被害を生むほどの受診控えを生み出してはならないが、交通事故や、その他不慮の事故の発生を極力避けつつ、救える人を救うために救急医療の需要を減らす努力が必要な事態である。一時収容所の運用や、搬送先の調整を都道府県レベルで行うなどの弾力的な対応と合わせて、難局を乗り切りたい。

薬師寺 泰匡(薬師寺慈恵病院院長)[新型コロナウイルス感染症]

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