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【識者の眼】「鳥インフルエンザとアニマルウェルフェア」鈴木隆雄

No.5101 (2022年01月29日発行) P.60

鈴木隆雄 (Emergency Medical Centerシニア・メディカル・アドバイザー)

登録日: 2022-01-14

最終更新日: 2022-01-14

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鳥インフルエンザのニュースのたびに、養鶏場の鶏の殺処分が報道される。殺処分の主目的は、鳥インフルエンザがコロナウイルスのように、人類に感染する変異株になるのを防ぐためなのか、それとも隣接する養鶏場への感染防止なのか。

随分前だが、国際救援の医療人を対象とした講習を受けたことがある。講習には動物から人類へ感染拡大するウイルスの危険性についても含まれていた。東南アジアでは家禽が家の周りを自由に動き回っている。戦前の日本もそうであった。その写真を見せて国際的に有名な講師は「このような環境こそ、動物ウイルスが人類に感染する原因で、この生活習慣は変える必要がある」と述べた。しかし、これは家畜化した動物が出現して以来、何千年と続いてきた生活である。そんな簡単に片づけられるものだろうか。

最近耳にするのがアニマルウェルフェアである。これまでの養鶏場は、集団過密のケージに鶏を詰め込み、動物虐待であり、もっと自由に動ける環境で育てるべきだという主張。ヨーロッパでは、このように放し飼いにしていると紹介。そこに訪れた客も動物に触れて満足そうである。それがいいと言うのであれば、東南アジアなど、家禽どころか豚でさえ家の周りで子どもたちと一緒に暮らしていると言いたい。

友人の一人が、郊外の一軒家だが広くもない庭に、鶏を2羽飼っている。魚や野菜など生ごみは庭に撒いて鶏が食べる。主食はホームセンターの精米機で頂く無料の米ぬか。時々、卵を頂くのだが、卵ってこんなにおいしかったのか、と思わせるほどの美味。私もまねようと、農家の人に聞いてみると、昔は家で飼う鶏用に農協がひなをわけてくれていたが、鳥インフルエンザの流行以来、農協もその扱いをしなくなった。今ではどこの農家も卵はスーパーで買うとのこと。あの講師に尋ねてみたい。生ごみは減るし、家で鶏を放し飼いしてもいいのではないかと。

鈴木隆雄(Emergency Medical Centerシニア・メディカル・アドバイザー)[アニマルウェルフェア]

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