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【識者の眼】「日本が世界第4位の移民大国だと知っていますか?」中村安秀

No.5108 (2022年03月19日発行) P.58

中村安秀 (公益社団法人日本WHO協会理事長)

登録日: 2022-03-03

最終更新日: 2022-03-03

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック直前の2019年は、日本列島の外国人交流の歴史において画期的な年であった。過去最高の在留外国人数293万人(法務省出入国管理庁)と訪日外国人数3188万人(日本政府観光局)を記録した。ご存じのように訪日外国人数は激減したが、2021年6月現在の在留外国人数は約282万人であり、わずか4%の減少にすぎない。言いかえれば、96%の外国人は最終的に日本に留まることを選択したとも言える。また、日本人出生数が減少する中で、2020年の外国人出生数は過去最高の1万8797人であった。医療現場の視点からは、英語圏や中国語圏だけではなく、ベトナム、ネパール、インドネシアなど外国人の多国籍化や多言語化が大きな特徴である。

COVID-19感染下の医療現場で、日本に在住する外国人の医療ニーズに対応しきれているのだろうか? 1982年の「難民条約」の発効に伴う国内法の整備の中で、初めて外国籍を持つ人が国民健康保険に加入できるようになった。厚生労働省も2012年に外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)を開始し、医療通訳育成テキスト、多言語診療申込書等の公開、医療機関向けマニュアルなどの施策を打ち出している。国際臨床医学会は2020年3月に「医療通訳士」認証制度を開始し、2022年1月現在、10言語176名の医療通訳士が認定されている。

世界に目を転じると、経済協力開発機構(OECD)の2019年の移民データベースでは、ドイツ、米国、スペインについで、日本は世界第4位の移民大国となっている。しかし、英国やフランスやカナダよりも多くの移民を受け入れていることを理解し、外国人の医療に取り組む必要性と重要性を自覚している医療者はまだまだ少数である。

「持続可能な開発目標(SDGs)」の誰ひとり取り残さないという標語は広く知られている。実は、その文章の後に次のような大切な言葉が続いている。「我々は、最も遅れているところに第一に手を伸ばすべく努力する(外務省仮訳)」。移民や難民に対する医療や多文化医療は、日本の保健医療の中で最も遅れている分野のひとつである。今後は、外国人の医療に積極的に取り組む医療者を支援するとともに、国際交流経験を蓄積している自治体部局と協働することにより、多言語・多文化経験を持つ職員の雇用や多文化医療研修など医療機関における「外国人が安心して医療を受けられるための環境整備」が喫緊の課題である。

中村安秀(公益社団法人日本WHO協会理事長)[SDGs][外国人診療]

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