No.5108 (2022年03月19日発行) P.56
柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科医長)
登録日: 2022-03-04
最終更新日: 2022-03-11
【お詫びと修正】
3月4日に記事を公開したときに「イスラエルから妊娠初期・中期に新型コロナのワクチンを接種した17万人の報告」と記載していましたが、正しくは「1.7万人」でした。お詫びして修正いたします(2022年3月11日)
新型コロナのワクチンの抗体は時間がたつと減少し、2回接種して4カ月経過すると半分近くまで下がってしまうことがわかってきました(NEJM. 2021;385:e83)。妊娠後期は感染したときに重症化リスクがあり、日本の陽性妊婦540人の症例解析では30%以上が中等症以上でした1)。妊産婦は2回目の接種時期が早いため抗体が減弱している方が多く、3回目のブースターワクチン接種が非常に重要です。ワクチン接種後の痛み、発熱、頭痛に対しては、妊活中、妊娠中、授乳中の方でもアセトアミノフェンを安全に使うことができます。この機会にぜひ一度ワクチン接種についてご検討ください。
妊娠中の方も3回目のワクチン接種を安全に打つことができます。イスラエルから妊娠初期・中期に新型コロナのワクチンを接種した1.7万人の報告では、胎児奇形や胎児死亡率の増加はありませんでした(JAMA Pediatrics. February 10, 2022)。妊娠中にワクチン接種することで、生まれてきた児がコロナで入院するリスクを約61%減らせると報告されました〔MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71(7):264–70〕。日本では妊婦の80%近くが新型コロナのワクチンを1回以上接種したとアンケートで回答しています2)。
授乳中の方も、妊娠中や一般の方と同じように3回目のワクチン接種ができます。ワクチン接種後に授乳を控える必要はありません。母乳中にコロナの抗体が移行し、赤ちゃんにもコロナの抗体が届くことが報告されています〔Obstet Gynecol. 2022;139(2):181-91〕。
妊活中の方および妊娠初期の方でも新型コロナの3回目のワクチン接種は安全に打つことができます。米国生殖医学会では「妊活中の方でも新型コロナのワクチンは安全に接種することができる」と推奨しています3)。2100人のカップルを対象にした研究では、新型コロナのワクチン接種後も妊娠率は低下しなかった一方で、感染した男性では60日間妊娠率が低下していたことが報告されています(Am J Epidemiol. 2022 Jan 20;kwac011)。
【文献】
1)日本におけるCOVID-19妊婦の現状〜妊婦レジストリの解析結果(2022年3月1日).
https://www.jsog.or.jp/news/pdf/20220301_COVID19.pdf
2)日本産科婦人科学会:妊婦の新型コロナウイルスワクチン接種に関するWEBアンケート調査(2022年1月12日).
https://www.jsog.or.jp/news/pdf/2022_COVID19_questionnaire_research.pdf
3)米国生殖医学会.
柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科医長)[新型コロナのワクチン接種][産婦人科]