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【識者の眼】「4月からのHPVワクチン無料化に備えよう」柴田綾子

No.5109 (2022年03月26日発行) P.59

柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科医長)

登録日: 2022-03-07

最終更新日: 2022-03-07

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2022年4月からHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの積極的勧奨が再開するほか、現在の12〜16歳の女性に加えて17〜25歳の女性(1997〜2005年度生まれ)もHPVワクチン(2価・4価)が無料で接種できる予定です(9価を無料にするか現在議論中)。4月より各自治体から無料接種の対象者のご家庭に郵送等での案内が通知されます。日本では1年間に約1万人の女性が新たに子宮頸がんにかかり、約2900人の方が子宮頸がんが原因で亡くなっています。厚生労働省のリーフレットも改訂されました。ぜひ活用してください1)

1. HPVワクチンを打ったほうがいい人はどんな人?

HPVワクチンの効果が高いことがわかっているのは、①性行為経験前の方、②(性行為の経験のあるなしにかかわらず)26歳以下の方、です。

コクランレビューでは45歳までの女性においてHPVワクチンの前癌病変予防効果が報告されています2)。また男性では肛門がん、中咽頭がん、陰茎がんの予防効果が報告されています。自費になりますが、26歳以上の女性や男性もワクチン接種は可能です。

2. 性行為後はHPVワクチンの効果がないの?

性行為の経験がある方でもHPVワクチンの効果はありますが、性行為経験前より効果は下がります。性行為をするとヒトパピローマウイルスに感染しますが、HPVワクチンは、既に感染しているウイルスを治療/排除することはできないためです。スウェーデンからの報告では、子宮頸がんのリスクは、16歳未満でHPVワクチンを接種すると88%低下、17〜30歳に接種すると、53%低下と報告されています3)

3. 1回目・2回目接種後に中断していた場合は?

残りの分のワクチン接種を行い、合計で3回接種すれば完了となります。予定の接種スケジュールから遅れてしまったとしても、最初から打ち直す必要はなく、抗体価も十分獲得できることが報告されています。

4. 途中で種類(価)を変えることはできる?

世界中でHPVワクチンの需要が高まり必要数が不足しています。厚生労働省の委員会では「2価と4価」は交互接種(途中で種類を変えて接種する)を認める方向です4)。現在、9価のワクチンを定期接種(無料)とするか審議中です。医学的には4価から9価に交互接種しても安全面で大きな有害事象の報告はありません(注)

*注釈:ただし、添付文書は「同じ価で3回接種する」と記載されているため、記載以外の投与方法でも、救済制度の対象になるか確認が必要です。

【文献】

1)厚生労働省:HPVワクチンリーフレット.

   https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/leaflet.html

2)コクラン:子宮頸がんおよび子宮頸部前がん性病変の予防を目的とするHPVワクチン接種. 9 May 2018.

3)Lei J, et al:N Engl J Med. 2020;383(14):1340-8.

4)厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会:HPVワクチンについて(2022年1月27日).

   https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000890273.pdf

柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科医長)[HPVワクチン]

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